【買ってよかったもの】大人でも楽しめる、持っておきたい絵本3選。
この絵本に登場する人たちは、朝起きたら必ず窓をあけるという習慣があります。
あるところでは窓のむこうに大きな山が見え、あるところではビルや繁華街。そしてあるところでは一面の海。さまざまな気持ちのいい朝の風景が、荒井良二さんの鮮やかなタッチで描かれています。
わたしも最近、朝、窓を開けて空気を入れかえるように心がけるようになりました。晴れた日なんかは外のカラッとした空気が風とともに部屋に入ってきて、明るい気分になれます。
登場人物の細かい設定などは特に記されていませんが、きっとそれぞれの人生ではうまくいかない日や、パッとしない日もあるでしょう。しかし、朝起きて窓を開けるということで今日という日をじぶんから迎え入れる。
主体者としての心、気持ちを明るくもっていこうとする、たくましい楽観主義が、この作品の底に流れているような気がしてなりません。
一日を明るい気持ちでスタートさせるにはもってこいの1冊です。
2冊目はこちら。キャラクターをご存知の方も多いと思いますが、谷川俊太郎さんが訳した詩的なストーリーが、ふかぶかと胸に響きます。
冬ごもりの準備、ねずみたちがせっせと食べ物を集めているなか、フレデリックだけはじっとしています。
「どうしてはたらかないの?」と仲間にきかれると、
「こうみえたって、はたらいてるよ。」と答えます。
フレデリックが集めていたものは、形には残らないものでした。その1つに「ことば」とあります。
誰かの役に立ちたいけれど、どうしようもない事情でそれができなくなってしまったり、外出自粛をもどかしく思ったりする日々。そんな時、フレデリックのようにじっと「ことば」を集めてみるのも良いかもしれません。いつか役に立てるように、感受性を深めて、想像力を広げてみる。
まさに、ものごとを見つめる視点そのものが変わる作品。どんな状況でも価値を生み出していける、と思わせてくれる ねずみのお話しです。
こちらは、夜明けを印象的な作品へと昇華させた名作。
おすすめの絵本は?と聞かれたら真っ先に名前が浮かぶ1冊でもあります。
みどころは なんと言っても最後のページ、夜が明けた瞬間です。うす暗かった世界は一変。太陽とはこれほど偉大な存在なのか、と思わず拝みたくなるような鮮やかさ。みごとです!
また訳も素敵で、
「やまが くろぐろと しずもる。」
など少ない言葉で、豊かな情景を表しています。
絵本はたとえ内容を知っていたとしても、改めてじっくり読み返すと、新しい発見があるから不思議です。じぶんの感じ方が変化したのか、その時考えていることの影響なのか。ささやかな一言に、感性を大きく揺り動かされることがあります。
「明けない夜はない」というあたり前すぎてふだん考えないようなことも、深い感動をもって気がつかせてくれます。
3冊紹介しましたが、良質な絵本は、一生ものの買い物です。買ってよかった、ときっとまた何年か先にも思うはず。
自宅にいることが多くなったこの頃、新たな視点をみつけに、絵本のページをめくってみるのはいかがでしょうか。きっといつもの日常が、まぶしく豊かなものへと、ますます彩られていくことと思います。(カメラマンくろかわ)
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