DIYの番組づくりが、わたしにもできる!?│ しまおまほ「マイリトルラジオ」
雑誌の取材で沖縄にある主要コミュニティーFMを10局近く訪ねる旅をしたのは、約10年前のこと。ラジオ文化が盛んな沖縄にはそれぞれの地区に個性を持ったコミュニティーラジオ局があるのだ。
大型スーパーの2階に、小さな商店街の中に、公民館のロビーに、山道に突然…コミュニティーFMの基地局が現れる。どの局もパーソナリティーが手元の機械を操作しながら出演者、技術、放送作家、雑用全てを阿修羅のようにこなしていた。
とてもせわしない一方で唯一無二の楽しい空間でもあって。放送の機材セッティング、メール選び、そしてコーヒーを自分専用マグカップに注いでスタジオへ。雑誌や新聞をひろげ、マイクの向こうへ世間話。もちろん、うちなーぐち。聴くのは県内の人なので解説もいらない。誰の家でこんなことがあった、あそこの通りでおかしな出来事があった、明日はスーパーのセールがあるから……。見事な内輪話も、そもそもリスナーが“内輪”の中にいるから問題なし。番組が終われば、次の人にバトンタッチ。家に帰って夕食の準備をする人や、番組のために抜け出した本業の仕事に戻る人もいる。わたしも、いつかこんな風にDIYでラジオがしてみたい…そんな話をしたら「すぐ出来ますよ」と、言われた。「今のYouTuberがそれですよ」と。
なるほど…そうか…わたしもYouTubeをすればいいのか…イヤ、違う。なんか全然違うんだよなあ…YouTuberって抵抗ある!って思ってしまうのは、若くないから…なんですかね〜。
しまお・まほ●エッセイスト、漫画家。1997年『女子高生ゴリコ』でデビュー。著書に『マイ・リトル・世田谷』。
『クロワッサン』1016号より
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