落語界のスポーツ熱を解説いたします。│柳家三三「きょうも落語日和」
イラストレーション・勝田 文
毎年2月下旬、柳家小三治と門弟有志で安比高原へおじゃまします。
一週間、山にこもってみっちり合宿……といっても落語のではなく、スキーの腕前を磨こうと本気の毎日です。落語は最終日の夜、ホテルの会場をお借りして師匠以下総出演で寄席を開催しますが、スキー焼けの黒い顔で高座に上がる者があったりします。
日焼け止めを塗るなど対策はもちろんとるのですが、うっかりした日に限って快晴……なんてことが、えてしてあるものです。
動かない商売の噺家ですが、スポーツ好きはこれでずいぶん大勢いるものです。スキー同様に日焼けが心配なのが一番人気のゴルフでしょうね。あれは片方だけに手袋をしますから、名人・古今亭志ん朝師匠が幽霊の出てくる落語で両手を前に揃えて出したら白い手と黒い手があまりにクッキリ。お客さまには笑われる、明治生まれのうるさがたの師匠にはお目玉を食う、さんざんの目にあったなんて話も残っています。
日焼けくらいなら小言で済みますが、Jリーグが発足した頃、落語界でもサッカー熱が高まってチームが出来たりもしました。接触プレーの多いサッカー、足を骨折するなど怪我人もかなり出てちょっと問題になったことも。松葉杖で正座もできないでは、落語日和どころじゃありませんからね。
昔は各一門に野球チームがあったほど盛んだったのが、今は若手に1チームあるくらい。世のはやりすたりは予想もつきませんが、ラグビーチーム結成の噂は……ないようですよ。
柳家三三(やなぎや・さんざ)●落語家。公演情報等は下記にて。
http://www.yanagiya-sanza.com
『クロワッサン』1015号より
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