【石井風子さん×広沢京子さん 対談】福岡という街の魅力【1】
撮影・河原諒子 文・平井莉生
福岡ですべて完結する“道具店”にしたくて。(石井さん)
キーとなる店ができることで、その“界隈”が新たに盛り上がる。
広沢 20年ほど前『カフェソネス』(*1)ができ、私はこのお店のイベントがきっかけで福岡に来始めました。その頃、20代の「何かやりたい」と思っていたお客さんが年を重ね、自分たちでお店を始めていて、さらに街が盛り上がってきた印象です。飲食だけじゃなくていろいろな分野で、世代が替わり新しいお店が増えてきた。
石井 私たちが浄水通から薬院駅近くに移ったのが15年前。その頃はあんまり店もなかったけれど、その後に若い人たちの個性ある店もたくさんできました。それから今に至るまで活気が続いていますよね。
広沢 今は家賃も上がっているけれど、それでも東京に比べたら安い。個人が店を作りやすい土壌があるんですよね。例えばカフェに別のカフェのショップカードが置いてあったり、同業種であっても応援しあう姿勢がすごく強いと思います。
石井 確かに、それはありますね。例えばメーカーさんから、うちから近い他店で同じ商品を取り扱ってもよいか、と聞いていただくことがあるんですよ。でも「いいですよ」って言っちゃうんです。お互いにこの街を盛り上げていきましょう、っていう気持ちで。
広沢 それってけっこうすごいことですよね。最初は驚いちゃいました。
石井 福岡は、日本という島国の中でもさらに海を隔てた九州にあるから、その中で独自の面白い文化が育まれやすいのかもしれませんね。“福岡だけで成り立つように”ということは考えられているような気がします。
広沢 そうですね。でも、飛行機の本数も多いしアクセスはいい。いざ福岡に入ってしまえば街同士も近い。
石井 糸島(*2)に作ったゲストハウス「bbbhaus」も、はじめは遠く感じて「来てくれる人はいるのかしら」なんて思っていたんです。でも実際は天神から40分で行けちゃうから、そんなに遠くないと思うようになる。
*1 1998年に薬院にオープンしたカフェ。福岡のカフェブームの先駆けとなった店として今も愛される。2015年にリニューアルした。
*2 福岡の最西部にある半島を含む市。海に囲まれた自然豊かな環境に、カフェや雑貨店などが続々オープンし、盛り上がっているエリア。
人と人との距離感が絶妙で居心地がいいんです。(広沢さん)