最初で最後(!?)の動物園へようこそ。パナソニック汐留美術館 『マイセン動物園展』
文・知井恵理
キリンにマントヒヒ、シロクマ、ペンギン、カワウソ……と、まさに動物園並みのバリエーション豊かな作品がそろった本展。ドイツの名窯、マイセンの食器や置物は日本でも愛好家が多いが、これほど動物モチーフの作品が作られていることは、あまり知られていないだろう。
「マイセンの動物シリーズの特徴は、とことんまでリアルさを追求していること。たとえば、『カモとカエル』という作品では、マガモの雄に見られる尾のカールした羽まで再現されています。写実的な作風や、それを忠実に再現できる技術力は見どころのひとつです」(パナソニック汐留美術館学芸員・岩井美恵子さん)
館内では、4つの章でさまざまな動物に出合うことができる。第1章では、楽器を演奏する21体の猿の像から成るユニークな作品『猿の楽団』など、神話と寓話をモチーフとした作品を展示。第2章では、器に装飾された愛らしい鳥や鹿などがお迎え。小花彫刻で飾られた「スノーボール」シリーズは、色とりどりの鳥たちのほか、躍動感あるカエルや、クワガタといった虫たちも作品を彩っていて愛嬌たっぷりだ。第3章では、有機的なフォルムを活かすやわらかい発色が特徴のアール・ヌーヴォー様式の動物たちが待っている。優雅にたたずむ猫やペンギン、凜々しいシマウマなどは、いまにも動きだしそうなリアルさも見どころといえるだろう。本展の最後を締めくくる第4章では、20世紀前半にモデラー(原型師)として活躍したマックス・エッサーによる動物が待っている。『ライネケのキツネ』に見られる後ろ脚で立ち上がるキツネや、後ろを振り向く『カワウソ』といった動物のかわいらしい一瞬をとらえた作品に、思わず見入ってしまうに違いない。また、ここでは各作品の地肌にも注目したい。マックス・エッサーは、その卓越した技術力で、マイセンにおけるアール・デコ様式を確立した人物。素材の艶感やなめらかさを多くの作品で存分に表現している。
「展示品の約9割が展覧会初出品なのですが、そのほとんどが個人蔵のため、次回の公開は未定です」
マイセンの高い造形力を味わえる動物園、お見逃しなく。
『マイセン動物園展』
パナソニック汐留美術館 〜9月23日(月・祝)
東京都港区東新橋1-5-1 パナソニック東京汐留ビル4F TEL.03-5777-8600
開館時間:10時〜18時(9月6日は〜20時。入場は閉館30分前まで) 水曜休館 料金・一般1,000円。https://www.panasonic.co.jp/Is/museum/
『クロワッサン』1004号より
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