はちみつは驚くほど傷が早く癒える特効薬。
取材・文/石飛カノ 撮影/森山祐子 写真、データ協力/山田養蜂場
はちみつは炎症や潰瘍をきれいにし、膿の出る傷を癒す。
近代医学の父、ヒポクラテスが言い残したはちみつの効用のひとつがこれ。傷の治癒だ。
現代の医療の世界でも、いくつもの報告がなされている。ある報告では、
「事例の90%において傷が劇的に早く、ときにはわずか数日間で塞がった」
とあり、またある報告では、
「1、2度の軽いやけどでは治癒が著しく促進された」
とある。前田さん宅の薬棚にも傷薬としてのはちみつが常備されている。
「切り傷にバターナイフではちみつを塗った絆創膏を貼る。やけどの場合は、よく冷やした後に塗って包帯を巻きます。天然の純粋のはちみつであれば、何でも構いません。市販の絆創膏を貼るより治りがかなり早いですよ」
牡蠣の殻の切り傷が翌日には塞がる理由。
山田養蜂場の藤善さんにはこんな経験が。
「カラ付きの牡蠣を剝いていたら、指をグサッと切ってしまいました。しばらくしてもう1か所をグサッ。これはいい実験になると、片方ははちみつを塗ってもう片方には塗らずにいたら、塗らなかった方はギザギザの傷口が空いたまま。塗った方は次の日には傷が塞がっていました」
この話を証明するこんな研究がある。イタリア・東ピエモンテ大学の研究によれば、やはりはちみつを塗った場合と塗らなかった場合では、傷口の治りがはっきり異なることが証明された。
シート状に培養したヒトの細胞にひっかき傷をつけ、何も塗らなかった場合とマヌカハニー、そば、アカシアのはちみつを塗った場合を比較。すると、そばやアカシアはちみつは、何も塗らなかった場合と比べて傷が塞がるのが早かったという。
さて、傷が塞がるとは、いかなるメカニズムか? 「皮膚が傷つくと、傷口を小さくするため〝線維芽細胞〟という細胞が組織内を移動して傷口に集まります。これを線維芽細胞の遊走と言います」(山田養蜂場 サブチーフ・鳥家恵莉さん) 「当社が助成した研究では、アカシアとそばのはちみつが線維芽細胞の遊走を促し、傷の治療を促進することが明らかになりました」
しかも、この実験、はちみつ水溶液の濃度はわずか0.1%。はちみつをそのまま傷口に塗った場合、もっと劇的な効果が表れる可能性は高いと考えられる。牡蠣の殻で切った傷口が翌日塞がっていたというように。
美味しく口にする分とは別に、傷薬としてのはちみつを確保しておきたい。
はちみつが傷口の修復を促す
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— マガジンハウス 編
定価:810円 (税込)
はちみつの“薬効”を最大限に生かす、具体的な方法をシーン別に紹介します。
さあ、今日から「はちみつ生活」始めましょう!
お話を伺ったかたがた
・中村 純さん 玉川大学ミツバチ科学 研究センター教授
・前田京子さん エッセイスト ベストセラー『ひとさじ のはちみつ』著者
・藤善博人さん 山田養蜂場 養蜂部顧問
・鳥家恵莉さん 山田養蜂場 サブチーフ
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