食事で健康を保つ秘訣は毎日6杯の味噌汁にありました。
長野県松本市の醤油・味噌の蔵元では、親子3世代で食卓を囲む。健康の秘訣は、発酵の恵みを存分に享受する、毎日の食事にありました。
撮影・青木加代子
さらに、しっかりと熟成期間を設けることで味は一層深みを増す。
「昔から父親が〝味1年、香り2年、色3年〟と言っていたけど、本物を造るには手間も時間もかかる。うちの味噌や醤油は1年から3年、しっかり寝かせているから、塩角が取れて味がまとまる。これが〝時間の味〟です」
確かに、大久保家の味噌汁は、甘くもしょっぱくもないけれど、うま味が強く、香り高く、それでいて後味は驚くほどすっきりしている。
「アミノ酸を構成する窒素のことをアミノ態窒素またはホルモール窒素というんだけど、うま味成分の指標とも言えるこの数値が高いほどうまい。平均的な味噌は100g中のアミノ態窒素が0.4gくらいなのに対して、うちの味噌は0.63〜1g。この少しの差が、味を決める上では大きな差になる。うま味があるから薄味でもおいしくて、だからこそ飽きずに2杯も3杯も飲めるんだと思うね。飲んだらストンと落ちるように味が切れる、このキレの良さも最高じゃありませんか?」
食事を3分の1ほど終えたところで、子どもたちは空のお椀を手に次々と味噌汁が入った鍋のもとへ。孫の優衣ちゃん、悠文くん、康生くんは、「味噌汁大好き」と口を揃える。3人の父親で大久保醸造店4代目の勝美さんも、この家に婿に来てからは、「毎食味噌汁がないと落ち着かない」と、カレーや蕎麦を食べる時にも必ず飲むそう。味噌汁は、大久保家の食卓に欠かせない家庭の味の肝心要なのだ。
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