おなら、毛のこと、デリケートゾーン、体臭──更年期世代の悩みに専門医たちが答える「秘密の相談室」
イラストレーション・大石さちよ 構成&文・野尻和代
話を聞いたドクター
泌尿器科──平本有希子(ひらもと・ゆきこ)さん 清澄女性泌尿器科クリニック院長。東京慈恵会医科大学卒業。産婦人科病院で婦人科領域の研鑽も積み、女性専門の泌尿器科クリニックを開設。
皮膚科──西郡克之(にしごおり・かつゆき)さん 上野皮フ科・婦人科クリニック院長。日本医科大学医学部卒業。一般皮膚科の保険診療から美容皮膚科の自費診療まで、幅広い治療を行う。
婦人科──高林綾乃(たかばやし・あやの)さん 上野皮フ科・婦人科クリニック勤務。大阪医科薬科大学医学部卒業。悩みや不安を抱える女性に寄り添うような診察を心がけている。
消化器内科──柏木宏幸(かしわぎ・ひろゆき)さん 池袋ふくろう消化器内科・内視鏡クリニック東京豊島院院長。埼玉医科大学医学部卒業。痛くない内視鏡の検査、治療の普及に尽力する。
お悩み:近頃、〈おならがよく出る〉し、〈ニオイも臭い〉ような気が…
「腸内環境は年齢を重ねるごとに変化し、悪玉菌が増えやすくなります。すると、悪玉菌が食べ物を分解する過程で、硫化水素やアンモニアなどのガスが発生。それが臭いおならの元になるのです。また、運動不足や自律神経の乱れによっても腸の働きが鈍くなり、便秘やガスも溜まりやすくなります」(柏木宏幸さん)
更年期のおなら対策には、毎日の食事を見直して、腸内環境を改善することが重要だという。
「発酵食品やオリゴ糖、水溶性食物繊維を摂り、善玉菌を増やすことを心がけて。ただし、不溶性食物繊維や高FODOMAP食といわれる小腸で吸収されにくい糖類を多く含む食品(りんご、牛乳、ヨーグルト、ごぼう、納豆など)の摂りすぎは、腸内でガスが発生しやすくなるのでほどほどに。自分に必要な栄養を知るために、腸内フローラ検査で腸の状態をチェックするのも手です」(柏木さん)
同時に、腸の状態に変化を感じている世代には、ぜひクリニックで内視鏡検査を受診してほしいとも。
「日本人女性の死因のトップは大腸がん。腸の腫瘍や炎症などによるおならの可能性もあるので、40代以上の人は一度検査をしてみてください」(柏木さん)
お悩み:〈眉毛は薄く〉〈口周りのうぶ毛は濃く〉なってきたのはなぜ?
若い頃、細眉ブームでせっせと抜いた眉毛も、いまや描かないと外出できないほど。逆に、口周りのうぶ毛は濃くなって、週1度は剃らないと……と嘆く声が。
「更年期の女性は、相対的に男性ホルモンが優位になります。すると頭髪や眉毛は薄く、口周りや胸、背中などの毛は濃くなる現象が起きてくるのです」(西郡さん)
改善策はホルモン補充療法がある程度は有効だけど、継続する必要があるという。
「日々の身支度を楽にするならば、眉はアートメイク、口周りはレーザー脱毛も一つの方法かもしれません」(西郡さん)
また、体毛に関することで気になるのは、介護脱毛をすべきか否か。
「歳を重ねると、自然と陰毛は薄くなってきます。けれども、介護を受ける立場になった場合、VIOのレーザー脱毛をしておくとお世話する側の負担が軽くなるのは確か。日々のケアがしやすく、ムレやかぶれなどのトラブルも減るので、脱毛してもよいかと思います。ただし、白髪にはレーザーが反応しないので、ある程度若いうちに行うのがおすすめです」(高林綾乃さん)
お悩み:〈デリケートゾーンが痒くて、〉セックスの時は〈ヒリヒリ〉するんです
不意に襲われる、デリケートゾーンのムズムズ感。そして、パートナーとのセックスも正直、苦痛……。そのなんともいえない不快感に、人知れず悩みを抱える女性も。
「加齢によってエストロゲンが減少すると、陰部や膣の粘膜も萎縮して乾燥し、痒みを引き起こします。さらに進行すると、触れるだけで痛むほどただれたり、膣が狭くなることもあり、それが性交痛の原因にも。そして膣内の常在菌バランスが崩れると、膀胱炎やニオイ、頻尿にもつながるので、ひどくなる前にまずは泌尿器科や婦人科の受診を。また、日常的にできるケアとしては、エクオールなどのサプリメントを摂取するほか、デリケートゾーン専用のオイルなどの保湿剤で、うるおいを与えることも大切です」(平本さん)
お悩み:更年期に入って、若い頃とは〈体臭が変わってきた〉かも
ふと鼻につく、なんとも言えない古い油のようなニオイ。自分の体から発せられるそれは……いわゆる加齢臭?
「女性ホルモンが減少してくると、体から分泌される皮脂内のパルミトレイン酸が増加。これが酸化して、古い油のような加齢臭の原因物質のノネナールが生成されます。でも、僕の経験上、気にしすぎの自己臭恐怖症の方も多いんですよ。日常でできる対策は、ノネナールの分解を助ける弱酸性・アミノ酸系ボディソープで洗うこと。脂っこいものやアルコールは控え、抗酸化作用のある野菜や果物を摂取すること。ストレスや寝不足も、酸化を促進するので避けたいところ」(西郡さん)
また、もう一つ気にしている女性が多いのが、デリケートゾーンのニオイ。
「問題ないことがほとんどなのですが、時には細菌性膣炎などの病気が潜んでいることもあるので、まずは婦人科の受診を。自宅でのケアは、抗真菌成分配合のソープの使用がおすすめ。ただし、洗いすぎると皮膚のバリア機能や自浄作用を損ない、かえってトラブルの原因に。泡でやさしく洗い、決して膣内部までゴシゴシと洗わないようにしてください」(高林さん)
『クロワッサン』1152号より
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