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「がんと診断されたら?」「治療方針はどう決める?」──自分らしさを失わないがん治療とは

がんに罹るのはもはや特別なことではないし、不安は知識で軽減できる。もしものとき、どう動きどんな心づもりでいるべきか知っておこう。世界的医学雑誌に多数の論文を発表する、腫瘍内科医の国内パイオニア・勝俣範之さんに聞きました。

イラストレーション・Hi There 文・石飛カノ

女性がかかりやすいがん、近年の傾向

「がんと診断されたら?」「治療方針はどう決める?」──自分らしさを失わないがん治療とは

国立がん研究センターの「がん情報サービス」の統計(2021年)によると、一生のうちでがんと診断される確率は男性で63.3%、女性で50.8%。およそ2人に1人はがんにかかる時代だ。

年齢的には40〜50代からがんの罹患が増えていくので、高齢化ががんの増加に繋がっているのも事実。では女性特有の罹患の特徴はあるのだろうか? 日本医科大学武蔵小杉病院の腫瘍内科医・勝俣範之さんに聞いた。

「罹患数で言うと、女性の場合は乳がんが年間9万人以上と圧倒的に多いんです。ところが死亡数は約1万6000人ですから、死亡する確率は17%となります。これに対して罹患数は少ないですが膵臓がんは死亡率が90%。乳がんはステージが低い段階で発見できるのに対し、膵臓がんは見つかりにくい場所にできて、しかも見つかったときにはステージが進んでいる。そういう違いはあると思います」

【日本人女性の悪性新生物死亡率と罹患数(2023年)】 参考:国立がん研究センター がん情報サービス
【日本人女性の悪性新生物死亡率と罹患数(2023年)】 参考:国立がん研究センター がん情報サービス

がんと診断されたらどうする?

【確定診断までの流れ】
【確定診断までの流れ】

がんが疑われた場合、画像検査や細胞や組織を検査する病理検査を経て確定診断が下されるまでが2週間〜1カ月程度。その後、さらに詳しい検査でがんのステージ(進行度)が決定され、治療方針が立てられる。

確定診断の際、必ず医師に確認しておきたいのが、何のがんなのか、大きさはどれくらいで、どの検査で確定したのかといった情報。

「がんと診断されたんですが、どうすればいいですか? と私のところに相談に来て、どの部位のがんかわかっていなかった方もいます。よくあるのはもともとは乳がんで肺に転移した場合、肺がんと勘違いするケースです」

とはいえ突然の告知の場では頭が真っ白になりがち。主治医の話をしっかり聞くための工夫は以下のとおり。

「一人で聞かずに信頼できる人に同席してもらい、メモをとったり医師の話を録音することもおすすめです。また、症状説明書や病理検査、画像診断のレポートなど、もらえるものはすべてもらっておくことが大事です」

【ステージ一覧】

ステージⅠ
がん細胞が粘膜表面にとどまっているステージ0に比べて腫瘍が少し広がっている状態。ただし、腫瘍は臓器の筋層にとどまっていてリンパ節には転移していないことが多い。

ステージⅡ
がんのサイズがさらに大きくなったり、腫瘍が筋層を超えて広がっている状態。また、がんのサイズがステージⅠと同様でもリンパ節への若干の転移がある場合はこのステージに。

ステージⅢ
がんが臓器の奥深くまで進行している段階。臓器の筋層は超えていないがリンパ節に転移が見られる、または臓器の筋層は超えていても他の臓器に転移がない場合はこのステージ。

ステージⅣ
がんがどれくらい深く臓器に進行しているか、または広がっているかは無関係。他の臓器に転移がある場合はすべてこのステージと診断され、根治が難しいケースが増える。

病期(ステージ)はがんの大きさ、リンパ節や他の臓器への転移によって決定される

治療方針・治療方法はどう決める?

がん治療の基本となるのは左に示したような手術、放射線治療、薬物療法といった3大標準治療。「標準」と聞くと「並み」の治療というイメージがあるが、これは大きな誤解。

「標準治療は英語のスタンダード・セラピーを日本語に訳したもので、一流で最善の治療という意味です。科学的根拠に基づいた最新で最善、しかも保険適用であるのが標準治療です」

ちなみに緩和ケアは第4の標準治療と呼ばれるもので、進行再発がんでは3大治療と同時並行で行うと延命効果が望めることも知られている。これらの標準治療の中からどれを選ぶかはステージと担当医師次第。

【治療法決定の3つの型】
【治療法決定の3つの型】

「ほとんどの場合は、医師が主導権を持つ“オレが決める型”か患者に情報を与えて選ばせる“患者が決める型”。でも最近では患者と医師が情報と治療決定結果を共有するシェアード・ディシジョン・メイキング、“共有型”という考え方が出てきました。医師が患者の職業や生きがいなど生活の状況を聞いて治療法を一緒に考え、最終的に患者自身が最適な治療法を選択できるようにすることがゴールです」

共有型は手術で多忙な外科医より、日本ではまだ数少ない腫瘍内科医の得意分野。病院選択の条件のひとつに腫瘍内科の有無を確認しておきたい。

「がんと診断されたら?」「治療方針はどう決める?」──自分らしさを失わないがん治療とは
  • 勝俣範之 さん (かつまた・のりゆき)

    日本医科大学武蔵小杉病院 腫瘍内科教授・部長、外来化学療法室 室長

    国立がん研究センター医長を経て現職に就任。あらゆるがん診療に携わる腫瘍内科医の国内パイオニアであり、世界的医学雑誌に多数の論文を発表。

『クロワッサン』1152号より

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