7つの休養タイプから探る、自分に合う「リカバリー法」とは?
撮影・中島慶子 イラストレーション・宮田ナノ 文・石飛カノ
なぜ現代人は疲れているのか
昨今、多くの調査で日本人が疲れているという数値が報告されている。たとえば日本リカバリー協会の調査によると、「高頻度で疲れている人」と「低頻度で疲れている人」を合わせると、実に約8割の人が何らかの疲れを感じていることに。協会代表理事の片野秀樹さんは次のように分析する。
「デジタルデバイスが発達したことでオンラインで仕事や会議ができるようになりました。その結果、自分の時間を作りにくくなったというのが原因のひとつにあると思います」
かつての営業職のように、仕事の合間に喫茶店でひと息つくということがしづらくなった。下手をするとオフの時間まで仕事のメールが追いかけてくる時代。
「さらに、人間は動物と違って使命感や責任感で疲労感をマスキング(覆い隠し)してしまいます。疲労は活動能力が下がっている状態、疲労感は疲労による脳の不快感で、ふたつは別もの。体からの警告である疲労感をマスキングしたまま活動を続けていると、やがて燃え尽き症候群の状態に陥る危険性もあります」
また、疲労感を感じていても寝れば回復するはずと、「休養=睡眠」と信じ込んでいる人は要注意だ。
「休養のリテラシーが低いと、休むことは寝ることだと勘違いしがち。でも寝るだけで疲れを回復できたのは子どものころの話。20代をピークに代謝も免疫も体の機能はすべて低下していきます。睡眠だけでは疲れはとれません。だからこそ、休養に関するリテラシーを身につける必要があるのです」
女性は男性より疲れている
同じ調査では、総じて男性よりも女性のほうが疲れているという結果も報告されている。しかも、20〜70代までの全世代において、疲れている女性の数は疲れている男性よりも多いという。
「現代の日本では、仕事を持っている女性は珍しくありません。その上で、家事や育児の分担は女性のほうがどうしても多くなりがちなのが実情。さらに50代ぐらいからは介護という負担までかかってきます。育児も介護も、24時間相手から目が離せず自分の時間が作りにくい。それで疲れてしまう方が多いのではないかと思われます」
また、女性が疲れる傾向の背景には、ペースの問題もあるという。
「女性は家の中では夫や子ども、介護している親の歩調に引っ張られがち。人間は自分のペースで動いているときが最もストレスが低い状態なんです。相手に合わせてばかりで自分のペースを取り戻せなくなることで、疲れがますます溜まりがちになるのかもしれません」
ただ休むだけでは50%しか疲労回復できない
朝起きたときすでに疲れている→でも仕事を休むわけにはいかないので活動する→疲れる→寝る→朝起きたときすでに疲れている……。これが従来の活動・疲労・休養の魔のトライアングル。
「いままでどおりの休み方ではもう追いつかないことは、みなさん肌で感じていると思います。ただの休養だけで充電できるエネルギーは50%程度。そこに“活力”という、エネルギーを充電する状態を加えて活動を再開するのがサステナブルなサイクルだと考えています」
その際、休養や活力を設けるタイミングはアフターではなくあくまでビフォー。これが重要なポイント。
「休養や活力が何のためにあるかというと、次のアクションのため。リカバリーの定義は、活動能力が低下している状態から活力をしっかり蓄えて次に備えること。5日間の平日があって2日間の週末があるのではなく、2日間の準備の後に5日間の活動期間がある。そんなふうに意識を変えていきましょう」
休養の方法には、7つのタイプがある
休養=睡眠ではない。活動能力を取り戻す活力というプロセスを取り入れることが大事なポイント。でも、具体的にどうすればいい?
「ただの休養ではなく、“攻めの休養”をしましょうという提案をしています。そのために7つの休養タイプを定義しました」
生理的に体を休養させる生理的休養、精神的なリラックスをはかるための心理的休養、外部環境を変えることで休養につなげる社会的休養。その3つをさらにいくつかに分けたのが7つの休養タイプだ。
『クロワッサン』1149号より
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