つらい手指のこわばり、しびれ。あきらめないで、予防と対策
イラストレーション・Jhon Danon 文・野尻和代 構成・中條裕子
なぜ起こるのか?
エストロゲン量の急激な減少によって滑膜が潤い不足に。
朝起きたら手がこわばっている、指が痛くて瓶の蓋が開けられない、ボタンがうまく留められない……。閉経前後から感じ始める手指のこわばりや痛み、しびれなどの不調。かつては使いすぎ、歳のせいとされて、諦めてただ我慢をしている女性も多かった。
「それは大きな間違いです。使いすぎならば、スマホやゲームなどで指を酷使している若年層に症状が出てもおかしくないし、加齢が原因というならば、更年期以降でも手に不調がなくきれいな人はなぜいるのか? 実はメノポハンドの原因は、女性ホルモンの一種であるエストロゲンの減少が大きく関与しているのです」と、平瀬さん。
「子宮内膜や乳腺、骨、皮膚、血管などにあるエストロゲン受容体は、手指の関節や腱の周囲にある滑膜にも非常に多いことがわかっています。閉経前後からはエストロゲン量が急激に低下し、滑膜が腫れやすくなります。すると、腱や関節が動かしにくくなったり、腫れて炎症を起こしたり、神経を圧迫して痛みやしびれなどを引き起こすのです。この症状は更年期以降だけでなく、同じくエストロゲン量が低下する授乳期にも起こる可能性があります」
では、いったいどんな人がメノポハンドになりやすいのだろうか? まず1つ目の条件が、エクオールが産生できない体質の人。エクオールとはある種の腸内細菌によって大豆イソフラボンが分解、代謝されてできた物質で、エストロゲンと類似した作用を持っているものだ。
「そもそもこのエクオール産生菌がないと、いくら大豆製品を摂取してもエクオールには代謝されません。エクオールが産生できない人は、50代で2〜3倍発症リスクが高まります」
2つ目が、手指の変性疾患の家族歴がある人。その発症リスクは、ない人に比べてなんと48倍にも膨れ上がる。
「母親や祖母に手の変形があった場合、遺伝する確率はかなり高い。変形にまで至らないように、より注意が必要になってきます。また、出産経験がある場合、授乳期間に手指に違和感があったならば、更年期以降に再度、手指に症状が現れる可能性が高いです」
予防できること
女性ホルモンに代わるエクオールをサプリで摂取。
閉経前後から起こる手指のこわばりやしびれなどのサインを見逃すと、7〜10年後には本当の病気に進行してしまう。そうならないためには、普段から自分の体の声を聞くことがもちろん大切なのだが、それ以外に、更年期以降、手や指の不調に悩まされないために、できることはあるのだろうか?
「閉経前後あたりから女性のエストロゲンの量は著しく低下するので、とにかく、その代わりとなってくれるエクオールを摂ることが有効です」
そのためには、まずエクオール検査をして、自分がエクオールを産生できる体質かどうかの確認を。
「現代の日本では、エクオールを産生できる女性の割合は2人に1人ほど。もし自分がつくれる体質であれば、毎日適量の大豆製品を摂取するように心がけて。そして、つくれない体質だった場合は、女性ホルモンと似た働きをするエクオールのサプリで補うのがおすすめ。エクオールを取り入れることは、手指だけでなく、更年期のつらい症状の軽減にもつながります」
巷にはエクオールのサプリがいろいろあるが、選ぶ際は、研究で効果が認められている1日10㎎が含まれているもの、そして、乳酸菌で発酵させたものであるか等をチェックしたい。
自分の体はエクオールを充分につくれている?
採取した尿から腸内でエクオールが産生できるか確認するキット。
大豆を乳酸菌で発酵させたエクオールのサプリ。1日の摂取目安4粒に10mgのエクオールを含有。
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