ぽっこりお腹は足から直す。正しい立ち方で全身がみるみる変化。
撮影・青木和義 スタイリング・白男川清美 ヘア&メイク・大谷亮治 モデル・くらさわかずえ イラストレーション・山口正児 構成&文・堀越和幸
ある程度の年齢がいくと、ぽっこりお腹に悩む人は多い。それが気になって運動やダイエットに取り組んだりもするが、残念ながらすぐには結果に結びつかないのが実情だ。
「貯えた脂肪を燃焼させるには、それなりの時間を要します。けれどもその前に、みなさんにぜひ試していただきたい方法があるんです」
と語るのはトレーナーの坂詰真二さん。その方法というのが、何と、ぽっこりお腹は足から直す、という提案だ。どうしてお腹が、足からなのか?
「これまで健康や美容をテーマにしながら、“お腹”をはじめ“体幹”や“巻き肩”や“肩甲骨”などさまざまな部位が取り上げられてきましたが、実は最も大切なのは土台となる足なのです」
坂詰さんによれば人体の仕組みも建物の設計と同じこと。
「土台の基礎工事がしっかりしていなければ、いくら床や柱を改築してもうまくいかないのと同じです。人間の土台は足。足が正しい位置になければ、何をやってもうまくいきません」
大切なのは自分の足が正しい位置にあって、きちんと立てているかということ。下に示した立ち方テストで、さっそく試してみよう。
片足立ちテストで、あなたの立ち方を調べてみよう。
(左右各30秒キープ)
楽な姿勢で立って両手を骨盤に置く。目を開けたまま左足を床から浮かし30秒キープする。次に右足を浮かし同じように30秒をキープ。手が骨盤から離れたり、少しでも軸足が動いてしまったらそこで終了。足の改善を今すぐ始めよう。
(ラクな立ち方は体にとって本当にラクか?を考える。)
片足立ちが案外難しいという人は、普段の立ち方に問題がある。
「脚や尻の筋肉を使わずに、骨や関節で体を支えるラクな立ち方が癖になっている人は苦手なはずです」
ダランとした姿勢だから、確かにラクではある。けれども、多くの場合は足の外側(小指側)に体重をかけた立ち方になるので、
「O脚になりやすく、それが定着すると膝の内側の骨同士がぶつかり合い外側の靭帯が伸びるというストレスが常にかかる状態が続き、やがて膝関節自体が変形してしまいます」
下のイラストは悪い立ち方の見本だが、心当たりはないだろうか?
右・両足の外側に体重がかかり、膝が開く立ち方。若い世代にも多く、その癖が抜けない人も。
中・"休め"の姿勢で、体重を乗せてない足は外向きに。軸足の骨頼りで体を支えている状態。
左・右の立ち姿勢の脚をクロスさせたバージョン。これもラクだから、ついやってしまいがち。
O脚は膝内側の骨と骨がぶつかり合い、外側の靭帯が引き伸ばされている状態。変形性膝関節症につながる。
(足元から頭の先まで連鎖する体のメカニズムを理解する。)
悪い立ち方を直すだけでぽっこりお腹が凹むーーそのメカニズムをさらに詳しく追っていこう。
「足を正しい位置に置くとO脚が改善されます。すると、後傾していた骨盤が立ち、猫背が修正され、ぽっこりお腹が自ずと凹みます」
上写真の正しい立ち方と悪い立ち方を見比べるとわかりやすい。
お腹だけではない、バストやヒップのメリハリ、そして首、肩の位置も歴然と変わってしまう。そのすべてのプラスの連鎖反応を作る源は足にある。
「美容面だけではありません。悪い姿勢で圧迫されていた肺や胃腸などの内臓の働きも取り戻せるので、健康面にも大いに効果があるでしょう」
なるほど、次からは正しい足のその具体的な在り方を見ていこう。
A.足の位置が正しくなると……
B.O脚が改善され脚がスラッと伸びる
C.骨盤後傾が修正されてぽっこりお腹が凹み、ヒップが上がる
D.猫背も改善してバストの位置が上がる
E.巻き肩もストレートネックも改善される
( “正しい足”のポイントは3つ。これを改善すれば全身が変わる!)
すべての連鎖の源は足にある……。では、その足の正しい使い方は具体的にはどうすればいいか? 坂詰さんの挙げたポイントは3つ。
「足と足の間の幅を広げ過ぎない、両足の人差し指を前に向ける、そして少し足の内側(親指)に荷重することを意識して立ってください」
たったこれだけの違いで、立ち方も歩き方も変わる。
下の写真の良い足と悪い足の見本を実際に試してみよう。良い足のほうで立つと、自然と下腹が凹むのを感じないだろうか?
「人間の体はつま先を前に向けると太腿の骨が内旋し、骨盤が起き上がる仕組みになっています。これを難しい言葉で骨盤大腿リズムといいます」
骨盤が正しい位置に戻ればその影響がさらに上半身に及ぶのはすでに伝えたとおり。さらには、正しい位置にある足は、歩きやすい足でもある。
「つま先を外に向けたO脚の人は足の外側に荷重するため、片足立ちに移行するごとに重心が横にブレて蛇行するような歩行になります」
常に足の外側に荷重される足を“回外足(かいがいそく)(上イラスト)”と呼ぶが、前出のテストで片足立ちがスムーズにできなかった人は、実はこの回外足である可能性が高かったわけだ。
(正しい立ち方を体に覚えさせるにはどうすべきか?)
こんな時に正しい立ち方でリセットを。
3つのポイントを押さえながら正しく立つことが大切なのはわかった。が、もっと大切なのは、それを継続できるか否かということだ。意識している瞬間だけぽっこりお腹が凹む……求めているのはそれではない。
「正しい立ち方を体に覚えさせるには、何かを待って立っている時は必ずそれをするというような意識づけをしてみるといいと思います」
例えばそれは、信号待ちだったり、エレベーターの中であったり。
「それと一日の大半を座って過ごしているという人も少なくないので、正しい座り方からぽっこりお腹を凹ませることも実践してみましょう」
足の位置を整え、骨盤を立て、正しく座る。ぽっこりお腹を改善する座り方も、左のお手本写真を参考にぜひマスターしてしまおう。
足から全身を変える座り方もある。
椅子に浅く座り、足を腰幅に開いて人差し指は正面、足を手前に引いて親指を床に。坐骨で座れば骨盤はきれいに立つ。
足の親指側が浮くと両膝が開き、骨盤は後傾、頭が前に。こんな座り方は首こりの原因にもなる。
(足の改善効果を全身に伝えるためのストレッチ。)
足元を整えたら、せっかくのそのプラス効果をよりスムーズに上半身へ連携させていきたい。そのためにストレッチは有効だ。
「人間の体は硬い部位に引っ張られる性質があります。なので、お尻などが緊張している人はどうしても骨盤が立ちづらくなってしまいます」
ストレッチが正しい立ち方をさらに練り上げる。お腹や胸、お尻、と日常の生活の中で気付かぬまに縮んでしまった筋肉を解きほぐそう。
お腹と胸のストレッチ
1.椅子に浅く座り足を腰幅に開き、親指を床に。正面を見ながら、両手で椅子の背もたれの下を持つ。
↓
2.その状態から膝を軽く下げながら上体を弓形に反らし、肩を後方に引き10秒キープ。3セット行う。
お尻のストレッチ
1.椅子に浅く座り足を腰幅に開き、踵を床に。骨盤を立てながら両手をももに乗せて、顔は正面を向く。
↓
2.その状態から、骨盤の前傾をキープしたまま手を滑らせ上体を前に倒し、10秒キープ。3セット行う。
お尻の奥の筋肉のストレッチ
つま先をできるだけ内側に向け、足を"ハ"の字にしてまっすぐに立つ。両手をウエストに当てる。
↓
その状態から、骨盤を少しだけ前に倒す。尻奥の深層外旋六筋が伸びる。10秒キープ。3セット行う。
(美しい立ち姿勢=燃焼系の体を、エクササイズでさらに絞る。)
足を整えて正しい立ち姿勢を取り戻したあなたは、脂肪燃焼のモードに入ったと言える。もう骨だけでなく、筋肉で体を支えているのだから。
「ここまできたら、さらにスリムでメリハリのある体を目指しましょう。簡単な有酸素運動や筋トレで、ゆるやかに脂肪を燃やすのです」
下に紹介したのはその4つの運動だ。フリーグラビティは立ち姿勢を一気に整えてくれるので、エクササイズの初めにやるといい。
フリーグラビティ
正しい足の置き方の3つのポイントが揃わないとできないのがこちら。プレ・エクササイズとして取り入れて、立ち姿勢の確認を。
(10秒キープ)
右・足を腰幅に開き、人差し指を前、内側荷重でまっすぐに立つ。両手は手のひらを前にして下げる。
左・胸を張り、お尻を突き出して両腕を引き、両足の親指に力を入れてゆっくり体を前に倒しキープ。
歩行エクササイズ
単なるその場足踏みのように見えるがそうではない。持ち上げた足の親指に体重をかけるところが肝。正しいウォーキングのために。
(1分)
右・足幅をできるだけ狭くして立ち、人差し指を正面に。右足の親指で床をギュッと押しながら踵を上げる。
左・右の踵を下ろすと同時に左の踵も同じように持ち上げる。左右の腕を振りながらリズミカルに行う。
有酸素エクササイズ
腕を振りながら両足を交互に置いた姿勢のまま、屈む→立ち上がる、を繰り返す運動。歩行エクササイズの発展系として。
(左右30秒ずつ×3セット)
まっすぐ立ち、右足、左手を前に歩く姿勢。そこから1・2・3・4と数えながら膝を曲げ左右の手を入れ替え、再び立ち上がる。次に5・6・7・8で同じように動き元に戻る。左右逆でも行う。
スクワット
“筋トレの王様”とも呼ばれるスクワット。ここでも、正しい立ち方を基本に屈伸運動をする。関節の負担が少なく、姿勢も崩れない。
(6〜10回×3セット)
右・足を腰幅に開き、人差し指は正面。腰に手を当てまっすぐに立ち、胸を張りながら骨盤を前傾させる。
左・骨盤の前傾をキープしたまま、お尻を後方に出しながら膝を90度に曲げたら、元に戻る。
『クロワッサン』1121号より