健やかな腸のための「食べ方ルール」。
文・韮澤恵理 撮影・千葉充
日々多くの患者さんの腸の不調を診療している小林暁子さんに、腸に効く食事法について話を聞きました。
「よく『何を食べればいいですか?』と聞かれますが、“だけ食べ”はダメです」
たとえば、腸のためにとヨーグルト「だけ」食べ続けるのは禁物です。それよりもバランスの良い食事を3食摂ることのほうが、腸の健康には大切なのですが「腸の調子が悪い人は、食物繊維が豊富な野菜や果物、穀類を食べていない」といいます。
腸内で善玉菌のエサになったり、便のかさを増やしたり、さらに悪玉菌や有害物質をからめとって排出する食物繊維の不足が、腸の不調の大きな原因だというわけです。
「できるだけ食事から善玉菌や食物繊維を摂ってほしいと思います。野菜が苦手という人も工夫次第で食べられますよ。私はシンプルな作りおきをおすすめしています。細かく刻んで混ぜ込んだり、みそ汁に入れるなど、加えてしまう作戦もいい。無理なくできるのが長続きのコツ」
小林さんから教わった腸活2つのルールも紹介します。
(ルール1)大事なのは腸内細菌を補うことと、菌を元気に保つ食材。
腸内環境を整えるための食材は大きく2つ挙げられます。一つは乳酸菌やビフィズス菌など、善玉菌を直接補うものです。
もう一つは食物繊維やオリゴ糖など腸内細菌が元気になるためのエサを届けるもの。これが案外知られていないんですね。
菌を送り込むならこれ!
腸内細菌にはヨーグルトと思っている人が多いのですが、ヨーグルトだけ集中的に食べても、食物繊維もフィトケミカルも摂れません。食物繊維は野菜や果物、きのこ、海藻などに含まれ、抗酸化成分であるフィトケミカルは野菜や果物の鮮やかな色素成分などに多く、体をさびさせない働きがあります。
乳酸菌やビフィズス菌を食事から摂るという視点では、ぬか漬けやすぐき漬け、キムチなどの発酵漬け物もいいですね。同じ発酵食品でもみそや甘酒、酒粕(さけかす)、納豆などは直接、腸内細菌にはなりませんが、消化を助ける酵素を生み出したり、免疫力を上げるなど、腸にいい作用がたくさんあるので、バランスよく摂ってください。
腸内細菌を増やす工夫も
もう1つ、腸内細菌が元気でいるためのエサも大切。これは主に食物繊維とオリゴ糖です。食物繊維には水溶性と不溶性があり、どちらも善玉菌のエサになり、さらに腸内環境も整えるので、とても大事な成分です。
オリゴ糖は甘味料として使うほか、食材からも摂れます。はちみつ、バナナ、大豆、ごぼう、玉ねぎなどはオリゴ糖の多い食材です。
2つの食物繊維
【水溶性食物繊維】
特色:水に溶けるのが特徴で、水分を含むとゲル状になる。便をやわらかくしたり、不要な成分を包み込んで排出する働きもある。
多い食品:昆布、わかめ、めかぶ、もずく、寒天などの海藻類、こんにゃく、果物、山いもなどのいも類、オクラなどのネバネバ野菜などに。
【不溶性食物繊維】
特色:水に溶けにくく、水分を吸着して膨らむ。腸内を掃除するようにして便のかさを増やし、腸の動きをよくする。
多い食品:大豆などの豆類、ごぼうや大根などの根菜類、きのこ類、ドライフルーツ、おから、玄米など皮付きの穀類や雑穀などに。