一流に格付けされる!? 無料アプリ『一流の常識力』 │山口恵以子「アプリ蟻地獄」
イラストレーション・勝田 文
二択、または四択の画面から正解を選ぶゲームアプリ。人気番組「芸能人格付けチェック」のアプリ版かも知れない。50問の正答率によって一流から三流まで格付けされる仕組。
確かに四択で「北斎の赤富士」「ゴッホのひまわり」「サグラダファミリア」を選ぶ問題など、間違えると恥ずかしいし、二つの赤ワインの写真から「ロマネ・コンティ」を選ぶ問題は、色の濃い方が×で、薄い方が○。明るく澄んだ赤色がロマネ・コンティの特色だそうで、これは素直に勉強になった。
しかし、四択でレタス(他の三つは全部キャベツ)やウニ(他はミカンとジャムとカラスミ)を選ぶ問題は「舐めとんのか?」と言いたくなったし、「国産天然鰻重と中国産養殖鰻重」「本物のダイヤモンド」のように、写真を見ただけでは判別するのが無理な問題もあった。
まして、イモリ(腹が赤)とヤモリ(腹が白)の区別が出来るとか、ウユニ塩湖がひと目で分るとか、そんなことが私の人間としての価値と何の関係があるのだろう?
そりゃ、私は十年前までサグラダファミリアを「桜田ファミリア」という車の名前だと思ってましたよ。東京新聞名物「エイプリルフール記事」を信じて、オバマ大統領の異父弟が日本にいると吹聴して赤っ恥掻きましたよ。でも、そんな私でも六十有余年、人の道を踏み外すことなく生きてきたんだから!
「三流の一般人」で悪かったな。
フン! クイズごときで人間が格付けされて堪るかってんだ。
山口恵以子(やまぐち・えいこ)●作家。最愛の母と過ごした最期の日々を綴ったエッセイ『いつでも母と』(小学館)。
『クロワッサン』1020号より
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