常盤貴子さんの無垢の美しさは生き方から。
女優、常盤貴子さんの“美”は、まさしく内面からくる美しさでした。
撮影・三宅勝士(D-CORD) スタイリング・市井まゆ ヘア&メイク・面下伸一(FACCIA) 文・入江信子
意思を表す、自分を表すことが楽にできるようになってきた。
生活での目下の楽しみはガーデニングやDIY。また、着物など“和”の世界にも夢中だ。
「年齢に従って、さらに海外に長く滞在したことによって、より日本を知りたいと思うようになりました」
お茶を始めると、書道が気になったり、生け花や器に興味が出たりと、ひとつのことからいろいろなテーマが派生していくのが楽しいという。
「海外で働いている建築家の友人が、その土地の人によく、『そんな細かいところ、誰も見ていないよ』と言われるって。でも、日本のものは、気づかないかもしれないけれど、そっと開けてみたら、そこに気遣いがあって驚くというような細やかさがある。その感覚って素敵ですよね。人の目がなくても、お天道様が見ているから手を抜かずに、という……」
一方で、海外で過ごした経験は、考え方に影響を及ぼしていて、自分を貫くという意識も強くなった。
「小学生時代から、誰かがいじめられているとき、『今、彼女はいじめられているけれど、私はどうすべきなんだろう』と考えているような子どもでした。大人になって、海外で仕事をするようになって、『君はどうしたいの?』を迫られるように。それをちゃんと伝えるには、どうしたいかを一度頭の中で考えなければならない。こういう習慣がついたのは、いろいろな国の人と接したからかもしれないですね」
そして年々、物事に対する自分らしいスタンスをキープできるよう、変わってきたと常盤さん。
「40歳くらいから貫いているのは、年相応に図々しくなること。気を使いすぎず、『何か?』っていう態度も取れるようになってきたし、それは年齢を重ねる魅力だとすら思っています(笑)。たとえば以前、古い車に乗っていたんですが、古いので突然、道路の真ん中で止まったりする。初めはそのたびに慌てて汗だくになっていたけど、あるときから『古い車は止まることもありますよ。みんな気をつけて!』って。そういう図々しさが身について、いろんなことで焦らなくなった」
ね、やっぱり年相応だよね、と笑う常盤さんは愛らしさの塊。
「チャーミングなおばあちゃんになれれば、きっとみんな助けてくれる。ふてぶてしさの陰でデヘヘッ、ごめんねって、愛すべき部分があれば大丈夫」
自由に、抗わず。常盤さんの透明感を形づくっているのは、一本筋の通った健康的な精神なのだ。
チャーミングなおばあちゃんを目指せば、何だってうまくいく。
『クロワッサン』1020号より
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