上田正樹の「悲しい色やね」、杏里の「悲しみがとまらない」など、手がけたヒット曲は数知れず。現在もさまざまな音楽シーンで活躍している作曲家の林哲司さんは、30年近く前、静岡県三島市に家を建てた。以来、1時間ほどかけて東京と行き来する生活を続けている。
三島市は昔からうなぎが有名で、専門店も多い。その中で、林さんが贔屓にしているのが『桜家』。創業150年以上の老舗は、行列のできる人気店だ。
「三島で暮らし始めた当初から通っています。元々うなぎは好きで、よく食べていたのですが、この店は本当においしい。一番驚いたのは、香ばしさと柔らかさの絶妙なバランスです。しかも、くどすぎず、胃にもたれないんですよね。静岡名産のわさびで食べる白焼きも絶品。食後は、すぐそばを流れる清流、源兵衛川のほとりを散歩するのがおすすめです」
富士山の雪解け水に数日間さらして臭みをとったうなぎは、軽やかで上品な口当たり。林さんは、自宅を訪れた友人や仕事仲間のためにお弁当を買ってきてふるまったり、遠方の知人に送ったりしている。うなぎ自体の味はもちろん、青々しく香り高い山椒も、これまでにないおいしさだと、感激されるそうだ。
「数年前、あの加山雄三さんが三島でコンサートをした時、楽屋の差し入れにうなぎのお弁当を持っていきました。加山さんは、僕がとても影響を受けた方なので、ぜひ食べていただきたいと思って。すごく喜んでくださいましたよ」
お中元やお歳暮などのしきたりは苦手。日常の中で、おいしいものに出合った時、「そうだ、あの人が喜ぶかも」と思い立って贈るのが、林さん流だ。
「思わぬ時にいただきものをすると、うれしいものですよね。僕にとっても、手みやげを贈ることは、相手のことを思い浮かべるためのいい機会になっています」