『クレオ 小さな猫と家族の愛の物語』ヘレン・ブラウンさん|本を読んで、会いたくなって。
猫はいろいろなことを教えてくれる。
撮影・新井孝明
「日本には“猫の島”があるんでしょ? 今度ぜひ行きたいわ」
愛媛県の青島のことだろうか。それとも香川県の男木島か佐柳島、宮城県の田代島……日本は猫たちの天国ですよ、とニュージーランド出身のヘレンさんに話したついでに、ニュージーランドを旅行したとき、羊と犬ばかりで猫を見る機会がなかったことを伝えると、
「みんな家の中にいるの」
やっぱりそうか。所変われば猫の居場所も変わる。世界17カ国で翻訳されたロングセラー、ただし日本では新刊の『クレオ』に登場するクレオも、家猫だった。
「長男のサムの誕生日プレゼントとして生まれたばかりの猫を飼うことに決めて、母猫から離しても平気になる時期を待っている間にサムが交通事故で亡くなったの。サムと入れ替わるように家に来た小さなクレオを見て、笑顔の消えていた次男のロブが笑ったのよ。家族の一員になったのね」
9歳の兄の死を見た6歳のロブにとってクレオは兄とのつながりだった。クレオとの時間がロブの心を癒やし、小さな守護者のようなクレオとの生活でヘレンさん自身も生きる力を取り戻した。
「クレオは24年ほど生きて、私たち家族の傷を癒やす役割を果たした頃に最期を迎えたの。ロブが『これでサムとのつながりが終わったね』というのを聞いて、私はこの本を書こうと決めたわ!」
原書『Cleo』がオーストラリアで出版されたのは2009年。今も家に猫がいるかどうか、とても気になっちゃう……。
「この本を書き始めて半年くらいで私は乳がんになったのね。妹が世話をしにきてくれて、少し散歩に出たらペットショップに素敵な猫がいたと教えてくれたの。体調が悪いけど見に行ったら、猫のほうから手を差し伸べてきたのよ」
Jonahと名付けられたその猫はヘレンさんが執筆するとき膝の上に座らせないとニャーニャー抗議するらしい。『クレオ』の執筆にも少なからず影響を及ぼした。
「邪魔してキーボードに乗ったりプリンタに乗ったりしてくるけど励みになったわ。すべての作家には猫が必要ね。とてもクレイジーな子で、自分で“I am a cat”というブログを書いているわ」
それは面白そう。翻訳出版されたら、ぜひ読みたい!
「猫を見ていると、人生について考えるきっかけになるわ。本当にいろいろなことを教えてくれる。どういう人生を歩むべきか。猫は寿命が短いけれど充実した日々を送っているの。人間も実は同じで貴重な日々を生きているのよ」