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ドラ・トーザンさんインタビュー
フランス人女性に学ぶ、のびのびとした生き方。

自然体で優雅。スタイリッシュで、のびのびと人生を謳歌するフランス女性は、いつの時代も女性の憧れ。日本では、そんなフランス女性のセンスやライフスタイルを紹介した本が数多く出版されています。なかでも、20年間、フランスと日本の架け橋として、テレビ、ラジオ、執筆と多岐に活躍するフランス人ジャーナリスト、ドラ・トーザンさんが発表した『フランス人は「ママより女」』は、女性の新しい生き方を指南した本として話題です。今回はドラさんに、フランス人の視点から説く、人生を楽しむ方法を伺いました。

撮影・小笠原真紀 ヘア&メイク・Ponja(それいゆ) インタビュー/文・浦本真梨子

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「自由」という第三の選択肢

クロワッサン倶楽部 ドラさん、私は最初に『フランス人は「ママより女」』というタイトルを見たとき、「一生、現役で恋をしましょう!」という恋愛指南書なのかな、とドキドキしながらページをめくったのですが、もちろん恋だけではなくって(笑)、そこには、仕事もプライベートも大切にしながら、自由に生き生きと暮らすフランス人女性のいまが書いてあって、胸躍らせながら読みました。

ドラ・トーザンさん(以降ドラ) そうですね。『ママより女』は、いろんな意味があるんです。妻になっても、母になってもその役割だけに徹するのではなくて、一人の女性、人間として輝いていてほしいということ。一度しかない自分の人生、思い切り楽しみましょうよ、というのがこの本のメインメッセージです。仕事の時間、家族の時間、アムールの時間、趣味の時間、社会貢献の時間、全部ひっくるめて人生なんだから、そのどれもあきらめずに楽しみたいですよね。

クロワッサン倶楽部 フランスの方は「人生を楽しむ」ことがとても上手ですよね。特に、平均5週間のバカンスを取っているという話を聞くと、休み下手の日本人は驚いてしまうわけです。日本では有休を取るにも「周りのひとに迷惑かかるかな」なんて想像してしまって、結局休めない人も多いのが事実。フランスは「週35時間労働制(週35時間以上、労働者を働かせてはいけないという規制)」があるにもかかわらず、GDPは世界第5位という世界トップクラスの経済力があります。何か秘訣があるのでしょうか?

ドラ フランス人はヴァカンスが好きと言われていますが、仕事だって一生懸命。集中して仕事をするから、だらだら残業することはほとんどありません。自分の仕事が終わったら、パッとプライベートの時間に頭を切り替えて思いきり楽しむ。デートしたり、ホームパーティをしたり、好きな芝居を観に行ったり。みんな、このメリハリのつけかたがとても上手なんです

クロワッサン倶楽部 日本は仕事とプライベートをうまくバランスよくこなしている人は少数かもしれません。特に女性は、仕事を続けていく中で「結婚するか、仕事を続けるか」「出産するか、仕事を続けるか」といった究極の選択を迫られることもあります。

ドラ 日本の女性は優秀な人が多いのに、結婚や出産をきっかけに仕事をやめてしまう人が多くいるのは本当にもったいないですね。もっと才能を生かしてほしい。古いロールモデルに縛られたまま、◯歳になったら家庭に入って、◯歳で一人目を産んで…と考えている人も多いし、実際そういうプレッシャーを感じることもあると思います。

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クロワッサン倶楽部 フランスでは結婚はしない=事実婚のカップルは増加傾向にあるけれども出生率も上昇傾向にあるそうですね。これは何か関係があるのでしょうか?

ドラ そうですね。でも事実婚だけでなくて、フランスにはさまざまなカップルの形があります。結婚にこだわらないカップルの多くが「事実婚」。異性同性問わず結べる契約で、税金控除や財産権の引き継ぎなどが認められている「パクス」も人気です。このように非婚を選択するカップルが多い中、フランスの出生率は2.02人(2012年)を誇るほどベビーブームにあります。平均出産年齢は30歳。40代で第一子を出産する人も多くいます。結婚はしないけど、子どもは生む。仕事はするけど、子どもは生む。これは一種の「フレンチ・パラドックス」と言われています。日本は仕事を辞めて主婦になる人は多いはずなのに少子化ですよね。

クロワッサン倶楽部 それはなぜでしょうか?

ドラ 充実した保育・託児システムがあるという社会基盤によるところも大きいのですが、自立した女性観が広く認識されていること、そして女性たちの選択肢が広がっていることも深く関わっています。フランス女性は生む、生まないの選択に迫られていません。もちろん出産だけではなく、女性たちは自分の人生を決める選択肢を手にしています。「適齢期」という言葉はありません。あなたの自由でいいんだということ、さまざまな生き方があるということ。これを忘れないでほしいですね。

クロワッサン倶楽部
 そうですね。自分の人生なのだから、だれかが決めた適齢期にはまらなくても焦らなくていいし、それよりも「自分がなにをやりたいか」をきちんと見据えて、自分の人生をしっかり楽しみながら歩んでいきたい。そして、その個人の幸せを周りのひとも認めて、応援できる社会になったらいいなと思います。日本では、出産や結婚をキャリアと天秤にかけて、どちらかを諦めていく人がまだ多く、管理職や役員クラスで活躍する女性はまだまだ少数です。

ドラ 男性と張り合ってがむしゃらに働くようではいつまでも改善されない。女性のほうが考えも柔軟で、時間の使い方が上手なんだから、そのお手本を社会で示してほしい。それは結果的に男性や日本社会のためにもなりますよ。

クロワッサン倶楽部 考え方も働き方も男性と同じでは、いつまでたっても女性が生きづらい社会のままですね。女性らしさの強みを生かしながら、社会を変えていく。たしかにそうかもしれません。ドラさんが「女性らしさ」を忘れないために何か気をつけていることはありますか?

ドラ 鏡はよく見ますね。よく見ていれば体のラインの変化もわかるでしょう?(笑)。そして「自分がどうなりたいか」を常にイメージしておくこと。理想的な自分を思い描くことで、それに近づこうとするし、どうなりたいかがわかっていると、考え方がクリアになる。女性らしさって、ヒールを履くとか、スカートを履くとかそういう単純なことではなくって、内面の意識かなと思います。フランス人だってヒールは毎日履かないですよ。だって石畳で歩きにくいから!(笑)。

クロワッサン倶楽部 なるほど。パリへ行くと、若い女性も優雅なマダムもフラットシューズで颯爽と歩いていますね。あと、よくカップルで歩いているところも見かけます。日本の「おひとりさま」の感覚で、一人でレストランにディナーに行ったら、他の席はみんなカップルだらけで、恥ずかしい思いをしたこともあるわけですが…(苦笑)。

ドラ フランスはカップル文化ですからね(笑)。もちろん、子どもがいる夫婦も二人でデートをしますよ。子どもはシッターさんに見てもらって、夫婦の時間をとても大切にしているのです。だから、お互いが魅力的であろうという努力もおこたりません。

クロワッサン倶楽部 「子どもを預けて」というと、日本ではどこか罪悪感を覚える人も多いのです。子どもを産んですぐ仕事に復帰するお母さんがいれば「子どもがかわいそうだ!」と、責める声があがることすらあります。「母親プレッシャー」が強いんですね。そうすると、「子どもを産むともう自分の時間がもてないのかな」「仕事しちゃいけないのかな」と不安にかられ、産むこと自体に抵抗を感じる女性も少なくないと思うのです。

ドラ 何も罪悪感を感じることはないですよ。子どもは子どもの時間を尊重してあげるべき。もちろん、放任主義がいいというわけではないですよ。お母さんだって一人の人間なのだから、自分の時間をもつことだって重要です。

クロワッサン倶楽部 そういう意見を聞くと、とても安心します。そして、日本でもお母さんがもっと楽しめる社会を一緒に作りたいなと思いますね。さて今回は、フランスの素晴らしいところをたくさん教えていただきましたが、ドラさんから見て、日本の素敵なところはどんなところにあると思いますか?

ドラ 食べ物、建築、ファッション…日本は本当に素敵なものが多いですが、特に「禅」のコンセプトは素晴らしいと思いますね。日本の洗練されたエレガンスが凝縮されていると思います。あと、新しいものを取り入れるのが上手。食べ物やスタイルなど流行をうまく取り入れるのが早いですね。どうか、その感覚でフランス人のような「自由なもの考え方」もぜひ広がってほしいと思います。ものだけ取り入れるのではなくて、自由な精神とバランス感覚をもうちょっと取り入れてもらえるといいですね。

クロワッサン倶楽部 70年代までは女性の避妊が禁じられ、銀行口座をもつことも認められず、とても保守的だったというフランス。今ではにわかには信じられませんよね。「自由」を求めて立ち上がった女性が、少しずつ周りの人の意識、社会を変えていき、現在の「自由の国、フランス」を形成しています。閉塞感漂う日本の社会に少し疲れたら、フランス人的人生の楽しみ方を取り入れて、ふっと肩の力を抜いてみてはいかがでしょうか。

【Information】

書影
 

『フランス人は「ママより女」』(小学館)より発売中

ドラ・トーザンofficial web site
http://www.doratauzin.net

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