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#05 ベルリンで感じた「心からの自由」。

文/写真・とまこ

スイスのベルンからの国際列車に乗ってやってきた。乗車時間は約8時間。こんな牧歌的な風景がずっと続く。ちなみに使っていたチケットはユーレイルパス(http://www.raileurope.jp)。

スイスのベルンからの国際列車に乗ってやってきた。乗車時間は約8時間。こんな牧歌的な風景がずっと続く。ちなみに使っていたチケットはユーレイルパス(http://www.raileurope.jp)。

午後8時、ベルリン駅に到着。うわ、かっこいい……未来空間な駅。ホームは隣にも上にも下にもいくらでも広がって重なり、たくさんの人が空気のようにスースーと流れていく。自然光が下のフロアにまで流れ込んでとっても開放的。そういえば人々の表情が軽やか。どうやら各国からの旅行者も多いみたい。旅する人口はドイツが世界一と聞いたけど、そんな土壌も関係あるのかもしれないな。

ともあれ、今夜の宿に行かないと……あ、名前しか知らない。住所や行き方、調べるの忘れてた。今iPhoneはネットにつながっていないし、う〜んまいったな。ひとまずバス停に行ってみようか。

バス停でわかるはずも無い路線図を眺めていると「大丈夫?」男性2人組が声をかけてくれた。同年代のバックパッカー。黒髪黒目、小柄な体型のアジア人。事情を話すと、スマートフォンでパッと宿への行き方を調べてくれた。

お礼を言って、どこの国の人か聞くとアメリカ。そっか、ご近所の国じゃないんだ……少々がっかりした自分に気づいてギクッ。彼らの風貌から同胞意識が芽生えたのは確かだし、自然な気もする。でも、国籍を聞いて距離を感じるのはヘンだ。今ここで心を通わせたのに。なんてナンセンス! 気づけて本当によかった。

ベルリンの駅。上にも下にもずっと続く。一大ビジネス都市の中心駅なのに、スーツ姿の人が圧倒的に少ない気がした。それも軽やかな印象につながっているかな。

ベルリンの駅。上にも下にもずっと続く。一大ビジネス都市の中心駅なのに、スーツ姿の人が圧倒的に少ない気がした。それも軽やかな印象につながっているかな。


さて、無事に「Berlin – Youth Hostel International」に到着。建物の大きさにびっくり。さすが、ユースホステル発祥の国だけある。ロビーは、様々な髪色と顔立ち、お一人さまからご家族、団体さんまで。まさに老若男女でにぎわっている。カウンターへ行くとスタッフさんが「こんばんは!」とっても元気。ていうか日本語だ。 

「お母さんは北海道人、お父さんはベルギー人。日本語少〜し」

とウィンク。それで今、彼はドイツに住んでいるのね。

Berlin - Youth Hostel International。中心部から近い上、バス停が目の前でとっても便利。満ちている活気につられるらしく、より外出が楽しみに感じられた。https://www.hihostels.com/ja/hostels/berlin-youth-hostel-international

Berlin – Youth Hostel International。中心部から近い上、バス停が目の前でとっても便利。満ちている活気につられるらしく、より外出が楽しみに感じられた。https://www.hihostels.com/ja/hostels/berlin-youth-hostel-international

ユースホステルのカウンター。いつも違う人なのに、みごとにいつも陽気で親切。おかげさまで帰ってくる時は毎回「ホッ」。

ユースホステルのカウンター。いつも違う人なのに、みごとにいつも陽気で親切。おかげさまで帰ってくる時は毎回「ホッ」。


部屋でひと休みすると22時、辺りはやっと真っ暗に。6月のヨーロッパってこんな感じだ。ぜんぜん夜が訪れなくってお得な気分。

時間は遅いけどお腹はすいている、夕食に出かけよう。歩いてみると、近くで開いていたのは一軒のみ。フィリピン料理屋さんだった。

店員さんは、ちょっとエキゾチック風味もある西洋顔。背は高くてがっしり。やさしい笑顔が印象的な人だった。

家庭料理「アドボ」を頼み、ドイツビールを飲みつつ待つこと5分。料理が運ばれてきた。アジアの屋台みたいに早いな。酢漬けの鶏肉の煮込みをごはんと一緒に口に運ぶ。や、やわらかい! 醤油とニンニクとエトセトラな味つけは、ビールと相性抜群、たまらない〜。

それにしてもこんな本格的な料理、どうやってドイツの人が習得したのだろう。

「母親はフィリピン人なんだ、しょっちゅう食べてるよ」

西洋の顔して、おふくろの味は醤油味の煮込みとは。ふわっと笑っちゃった。

アドボとビール。ドイツビールは何を呑んでもおいしい! ドイツの人のビールへの愛を感じすぎて、数日間の滞在ではそんなことしか言えない(笑)。

アドボとビール。ドイツビールは何を呑んでもおいしい! ドイツの人のビールへの愛を感じすぎて、数日間の滞在ではそんなことしか言えない(笑)。


店を出て道を歩く。あちこちでBARはにぎわっている。窓越しにのぞくと、様々な顔立ちの人が呑んでいて、不思議な一体感。

……気づいた。頭がくらくらしてる。空気が自由過ぎて刺激的。誰もわたしの国籍なんて聞いてこない。興味がないんじゃない、彼らが接しているのは、日本国籍のこの人じゃなくて「わたし」。国籍が関係ない、人です、自分ですってだけ。これが、ベルリンだ。

翌朝は小雨。野暮用があり、知人に紹介していただいたシュライバーさんとユースホステルのロビーで待ち合わせていた。素足にサンダルで待っていると、彼女がやってきてわたしに寒くないか聞く。

「大丈夫! でも、みんな随分暖かそうな格好……自分だけこんな感じじゃ恥ずかしいかもしれませんね」
彼女はキョトンとして笑った。
「だ〜れも他人の服装なんて気にしないわよ、これ本当の本当なの」

日本在住経験もある彼女は、きっと日本人の周囲を気にする感覚を理解した上で言っているんだ。そういえば、彼女はスッピン。

シュライバーさんは39歳、9歳の息子さんと彼氏との3人暮らし。未婚だ。平日は朝から夕方まで働いている。モチベーションは家族で過ごす日曜のランチだとか。そのうち結婚するのかな? 聞くと、またもキョトン。続いて「しないわよ」と断言して笑った。

しようとしまいと、社会生活的な支障はまるでないそう。家庭を持つカップルで結婚しているのは半分くらいだとか。それより離婚するリスクはとても高く、必ず一年の別居期間を設けた上で、お互いが弁護士を立て裁判で決着させるのが決まりだと。

時間もお金も精神も全てがすり減りそう……。ちなみに離婚率は50%。そういえば、街中を歩いていて、弁護士事務所が多いのは不思議でもあったんだ。

やさしい笑顔のシュライバーさん。ユースホステルのBARで。

やさしい笑顔のシュライバーさん。ユースホステルのBARで。


それから、夕べ感じたベルリンの衝撃を話した。

「ここの自由は本物よ。壁が崩壊してからよね。わたしはあのとき中学生で、東側に住んでたの。心底びっくりしたわ!! それまでも幸せに暮らしていたし、家庭に影響はなかったけど。一番画期的だったのはどこにでも行けるようになったことよ。おかげでその後日本に留学もしたし。日本が大好きなのよ、とっても親切!」

なんでもありで、とにかく前向きで、かっこいい空気で満ちているベルリンは、この壁がうまく表現している気がした。これは「ベルリンの壁」ではないけど。古くから続く映画館へと続く道の壁。

なんでもありで、とにかく前向きで、かっこいい空気で満ちているベルリンは、この壁がうまく表現している気がした。これは「ベルリンの壁」ではないけど。古くから続く映画館へと続く道の壁。

日本の大学にしたのはある意味消去法で、積極的な理由ではなかったけど、実際に体感して好きになってくれたのはとてもうれしい。
  
でも、親切? ピンとこなかった。世界を旅していて、道がわからず困った顔をしていると、声をかけてきて助けてくれる国はわりとある。日本では、残念ながらそんな情景あまりないでしょ。

「日本人は助けてくれないわね。でも仲良くなるとすごく親切で」

なんて寛容! そして、日本人としてものすごく恥ずかしい。

「ところで、日本の男性はどう? つき合った?」

「女の扱い知らないわよね……だからつきあわないわ」

爆笑! その質問には理由があった。旅中、何度か現地の男性に「ジャパニーズガイとは違うんだよ」と言われたからなんだ。意味は、エスコート下手の彼らとは違うから安心して任せてね、ということ(笑)。外国の女性でもそんな風に感じている人もいるんだなぁ。まぁ、日本の女性について聞いていない自分はズルいんだけど。

「一番共感できないのは、年配のカップルよ。日本だと歳をとるとバラバラの人生を歩むでしょ。一緒に道を歩きもしない。そんなのイヤだわ〜、何歳になっても手をつないで歩きたい」

大賛成!! 彼女には東の空気で育ったある種のマジメさを感じる部分もある。ノーメイクや落ち着いた服装もそうかな。でも、心はとっても先進的で。そんなギャップがとってもチャーミングだった。

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