【錦糸町で味の世界旅行】東欧に中近東、世界の味が集まる多国籍タウン。
撮影・村上未知 文・嶺月香里 マップ製作・竹中聡司
JR総武線と東京メトロ半蔵門線が乗り入れる、近年開発めざましい錦糸町。駅の北口は韓国料理やタイ料理店、南口にはベトナム料理などエスニック料理店が点在している。もともと多国籍な店が多い街として知られていたが、かつては沿線に住む在日外国人向けの店といった色が濃く、入りづらい雰囲気もあった。しかし、’03年の半蔵門線の開通、’12年の東京スカイツリーの開業あたりから、錦糸町の人の流れが大きく変貌! 初めて訪れる日本人客でも楽しめるような店が増え、新しい多国籍タウンに成長しつつあるのだ。
例えば、中国語と日本語が飛び交う『李湘潭 湘菜館』は、ここでしか食べられない湖南料理を目指して遠くから訪れる食通も多く、連日大にぎわい。
ルーマニア料理の『ラ・ミハイ』は、10年前までは近隣の飲食店で働くルーマニア人のお客さんが多かったが、今は逆で日本人客がほとんど。東欧好きや、グルメな日本人女性の間で熱烈な人気を集めている。
また『コシャリ屋 コーピー』のように、日本人が経営する、マニアックなのに入りやすいエスニック料理の専門店があるのも錦糸町ならでは。
多国籍タウンとしての歴史が長いゆえ、この街でなければ食べられない本格的な味や、各国の雰囲気までもが満喫でき、しかも日本人でも臆さず入れる店が多いというのがうれしい限り。国技館のある両国駅の隣駅で、スカイツリーからも徒歩圏内、東京都心からのアクセスも優秀。ひとつの街で世界旅行がたやすくできる、これもまた、東京の魅力といえるだろう。
【中国・湖南省】李湘潭湘菜館(リショウタン ショウサイカン)
辛いけれども後をひく“辣”の旨みを満喫。
中国八大料理のひとつと称される湖南料理の店。毛沢東の故郷として知られる中国南部の山岳地帯・湖南省の郷土料理で、唐辛子を多用した辛ウマ料理の傑作が揃い踏み。しびれる“麻辣”ではなく唐辛子メインの“辣”な辛さで、発酵由来の酸味をきかせた酸辣など鮮烈でいて後味のいい辛味が体験できる。つるりとのど越しのいい無添加の生ビーフンは毎日店で作られ、丸麺ときしめんのような幅広麺が選べる。八角などの香辛料に漬けた厚揚げや肉、高菜を使うなど、初めて食べる味なのに日本人の舌に馴染むおいしさで、連日店は大盛況!
東京都墨田区錦糸2-7-12 徳重ビル1F TEL.03-5637-8728 営業時間:11時30分~14時、17時30分~23時 金・土曜昼~14時30分、夜~23時30分 日曜・祝日昼~14時30分、夜17時~22時(LO各1時間前) 無休
【ルーマニア】ラ・ミハイ
肉料理に手腕が光るどこか懐かしい東欧の味。
紅海を望むリゾートホテルでシェフをしていた店主のミレイさん。旅行で来日した際に日本の肉のレベルの高さに感動し、この最高級の肉を使ったルーマニア料理を出したいとレストランをオープン。ルーマニア大使館のパーティにケータリングするなど実力はお墨付き。羊腸に肉を詰めて燻製室でスモークした〈自家製ソーセージ〉に、柔らかなのにぷりっと弾力のある不思議な食感の〈ミティティ〉など、手をかけた肉料理が味わえる。ほかにも〈パプリカの肉詰め〉や〈ロールキャベツ〉など、なぜか懐かしく感じる味もルーマニア料理の魅力だ。
東京都墨田区江東橋4-19-10 TEL.03-6659-9970 営業時間:17時~翌2時(LO) 土・日曜・祝日18時~23時(22時LO) 不定休
【エジプト】コシャリ屋 コーピー
ジャンクに見えるが、実はヘルシーなエジプト国民食。
バックパッカーをしていた日本人オーナーが、エジプトで感動したコシャリを広めようと専門店を立ち上げた。コシャリとは、レンズ豆やひよこ豆を米と一緒に炊いてパスタと混ぜ合わせ、揚げたまねぎやトマトソースをかけ、よく混ぜて食べるエジプトの国民食。途中でダッア(レモンガーリック酢)やシャッタ(辛いソース)をたっぷりかけると、さらにおいしさがアップ! 現地では米の炊き方やトッピングなど、店独自の工夫が凝らされていて、日本のラーメン店のような感覚。暑い国で生まれた郷土料理は、豆たっぷりで栄養価も高く夏バテ解消にも。
東京都墨田区江東橋4-20-13 山田ビル2F TEL.03-6869-2343 営業時間:11時30分~15時、17時~21時、金曜~24時(LO各30分前) 月曜休(祝日の場合営業、翌休) ※テイクアウト可。
『クロワッサン』995号より
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