睡眠アプリで快適な目覚めは叶うか?│山口恵以子「アプリ蟻地獄」
イラストレーション・勝田 文
実は今、私は睡眠に悩んでいる。
「Sleep Cycle alarm clock」は目覚めが快適になる睡眠アプリとのこと。起床時間を設定すると、その三十分前から一番眠りの浅い時間にアラームを鳴らして起こしてくれる。しかもグラフを見れば眠りの状態が一目瞭然。いびきの時間も記録される。
これはもしかして救いの神?
睡眠は身体を休めるレム睡眠と脳を休めるノンレム睡眠があって、レム睡眠の時、ほ乳類は夢を見る。夢を見ないと言う人は、ただ覚えていないだけだそうだ。
その夢も、人が覚えているのは目覚める前のごく一部らしいのに、近頃は夢の時間が異常に長くなった。夢はだいたい不条理な内容で、私は長時間不条理に直面せねばならず、迷惑なことこの上ない。
昔はこんなことはなかった。食堂に勤めていた十二年間は、夜九時に寝て朝三時半に起きる生活で、睡眠時間は貴重且つ快適だった。それが今や、快適な目覚めなんか全然ない。
早速お試し。寝るのが楽しみだわ。
しかし、第一日は気負っていたのか、アラームが鳴る前に目が覚めてしまった。
と、睡眠のグラフを見て驚いた。交互に現れて波形を作るはずのレムとノンレムの睡眠が、まるで津波のような形状になっている。つまり、私はものすごく眠りが浅いのだ。
多分、夜中に何度も母のトイレ介助に起きたせいで、起床時間が乱れ、睡眠の質が悪化しているのだ。
生活習慣から改善しないと、快適な目覚めは望めそうにない。
山口恵以子(やまぐち・えいこ)●作家。最新刊『工場のおばちゃん あしたの朝子さん』(実業之日本社)が発売中。
『クロワッサン』974号より
広告