「例えば、ミャンマーの首長族が貧困の中で子育てすることはとても大変で、10人中3、4人が幼児期までに亡くなるということは、事実としては知っていました。けれど、子どもを生かすために不作の村を捨て、森を切り開いて新しい村を築いたり、子どもの最良の人生のために自分が見世物になって金を稼いだり。そういう親がいることやその心情には、これまで目を向けていませんでした」
取材前の予想や仮定が大きく覆されることも少なくなかった。
「エイズ大国のスワジランドでは、エイズ孤児を救う社会のシステムがある程度機能しているんだろうと考えて取材に行ったけれど、実際はそこがうまくいっていなくてつらい思いをしている子どもがいた。でも、僕はそういうふうに自分が裏切られたことこそ書くべきだと思うんです。それが現実の芯のようなものだから」
過酷な現実を前にして痛感したのは、日本の子育てがいかに恵まれているかということ。