『りこんのこども』紫原明子さん|本を読んで、会いたくなって。
大人が思うほどかわいそうじゃない。
撮影・青木和義
離婚した親のもとに育った子どもたちがそれをどう捉えているのか、果たして彼らは親の離婚という、人生の大きな“事件”に何を思うのか……? その実情に切り込んだ紫原明子さんも、2人の子を持つシングルマザーだ。
「大人が離婚を語る本はあるけれど、子どもの声が書かれている本ってほとんどない。彼らにしか言えない子の側の意見を、極力素直に書くことを心がけました」
6組の親子にインタビューした本書。実はフィクションと事実とを混ぜて書いてある。
「子どもたちの言葉の背景にある生活を描きたかったのです。でもプライバシーの問題から、いろいろ特定されるのは避けたい。離婚の是非はさておき、彼らの主張を正確に伝えようと思いました」
それぞれのエピソードを読んでみると、子どもたちの捉え方がいい意味でライトなことに驚く。
「この本に出てくる子たちはインタビューに応じられるぐらい安定しているし、親に愛されている。ある子どもにとっては親の離婚というのは一つの要素でしかない場合もある。もちろん大きな要素ではあるけれど、学校のことなど含め、いろんな悩みが混在しているんですよ。みんな思春期ですから」
決して悲しい話にまとまっていないのは、紫原さんの思惑なのか。
「取材を受けてくれた子どもたちが、大人になってこの本を読み返したらどう思うか、という点は意識しましたね。今現在、仮に親を悪く言っていたとして、それは嘘のない気持ちかもしれないけど、活字になるとやはり強いですから。気持ちは変わるものだし、言葉には表れない思いもある。でも真実でないといけない。このバランスを取るのに注力しました」
“りこんのこども”は、決して不幸ではない、ということですか?
「一般的に子どもの言葉はシンプルなので、間違いではないけれど正解ではないことも。例えば、『ママはパパがきらいだからわかれたんでしょ?』というような、でも大人にはその一言だけでは表せないニュアンスがありますよね。親の離婚を経験した子はそういった中間の感情などを知るのが他の子より早いかもしれません。割り切れないことが世の中にはいっぱいあるということを理解するのが、やがて彼らが生きていくときに知恵となって助けてくれるはず」
結局“りこんのこども”というのはひとくくりにはできない。
「ここで生きていくしかない、という子どもならではの不自由さ、そのなかで着地点を見いだす子どもの強さを感じてください」
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