キッチンは、木を使ったぬくもりのあるデザインが気に入ってイケア製に。シンクとコンロの下はオープンのままにして、入居した後で、使いながら収納を考えていった。よく使うものはすぐ手に取れる場所へかけるなど、使用頻度に応じてしまう場所を決めている。
夫婦で47㎡、小さなスペースを大きく使う。
- 撮影・徳永 彩 文・石川理恵
フリーの編集者として、インテリアや料理などの記事を手がけている加藤郷子さん。47㎡のワンルームに夫婦で暮らしている。2人で住むには決して広くないその一角には、加藤さんの仕事スペースも設けている。
「中古のマンションをリノベーションしたくて、条件の中で見つけたのがこの部屋でした。窓からの眺めが気に入ったんですよね。もとは2 DKで和室もある間取りだったのを、壁を抜いてワンルームにしてしまいました。もともと寝室だけは分けるつもりでしたが、予算が足りなくなって。仕切りならば後からでもつけられるからと、入居の時点では、いったんあきらめました」
食べる、くつろぐ、寝る、働くをひとつの空間にまとめるとなれば、生活のリズムやオンとオフの切り替えがつけにくくなりそうだ。
そこで加藤さんは家具の配置でゆるやかにゾーンを区切り、ワンルームでの過ごし方にメリハリをつけている。細長い空間のいちばん奥を寝室とし、手前に向かってリビングダイニング、キッチンという並びに。書棚、机、パソコンで圧迫感が出そうな仕事スペースは、キッチン横の少し奥まった場所に作った。
それぞれのゾーンはコンパクトながらも、目的に見合ったレイアウトで、過ごしやすい工夫がしてある。ベッド周りは物を置かず、白壁をすっきり活かして落ち着いて眠れる雰囲気に。夫婦でくつろぐリビングは、テレビと向き合う絶好のポジションに、チェアとオットマンを並べた。
快適に暮らすためのこうしたスキルは、インテリアや収納の取材をしながら、身につけていったもの。「どこかの家におじゃましては『これ、やってみよう!』と、アイデアをもらっています」と加藤さん。
中でも目立っていたのが、パッと手に取れて、インテリアをじゃましない物の収め方だ。使う場所の動線上に物をなじませるように、例えば、キッチンの作業台の横にナイフ収納があったり、テーブルの上のブレッドケースにカトラリーをしまっていたり。ほこりを払うブラシ類は、用途に応じて部屋の数カ所にぶらさげている。エアコンのリモコンも、かごに入れて本棚のフックにひっかけていた。
短い動線で効率的に料理ができる コンパクトなキッチン。
キッチン横の奥まった空間を 仕事スペースに。
リビングからは死角になるので、機能的にまとめている。「本当は造りつけの本棚が欲しかったんですが、ジャストサイズのものを見つけて、本棚もイケアに」と加藤さん。仕事の資料や書類関係は、箱や引き出しを利用して、ジャンルを分けながら収納している。
掃除ブラシは 使う場所ごとに ぶらさげておく。
引っ越しが多かったため、持ち物はそう多くなかったが、この家に住むようになって「むやみに物を増やすことはなくなった」と話す。仕事柄、本だけはどうしても増えてしまうが、3カ月に1度は整理すると決めている。
「以前は65㎡、その前は100㎡のマンションにも住んでいましたが、部屋が広いほうが、かえって散らかるような気がしました。たとえば、宅配で荷物が届いても、場所があるから段ボールも置きっ放しでした。この家は置くところがないから、すぐに片づけますよ(笑)」
物を捨てるのは好きじゃないので、手に入れたら長く付き合えるように向き合っている。
「持っている雑貨を、全部飾らないようにしています。部屋が重くなるし、ずっと出しているといつの間にか飽きてしまうので。ちょこちょこ入れ替えたほうが、しばらくしてまた出した時に、『かわいい』って思えて新鮮です」
小さな暮らしにすっかり順応した加藤さん。成り行きで住んだワンルームだが、その開放感が思いのほか気持ち良かったので、寝室に仕切りをつけるのはやめたそうだ。
『クロワッサン』934号より
●加藤響子さん フリー編集者/インテリアや食のジャンルで活躍。書籍『アートと暮らすインテリア』(パイインターナショナル)などを担当。
この記事が気に入ったらいいね!&フォローしよう
※ 記事中の商品価格は、特に表記がない場合は税込価格です。ただしクロワッサン1043号以前から転載した記事に関しては、本体のみ(税抜き)の価格となります。
人気記事ランキング
- 最新
- 週間
- 月間