『春の江戸絵画まつり 長沢蘆雪』府中市美術館──奇想だけどかわいい、長沢蘆雪の世界
青野尚子のアート散歩。江戸時代中期の絵師、長沢蘆雪(ながさわ・ろせつ)。その蘆雪の、東京では初めての個展が開かれる。蘆雪作品が大集結するこの展覧会の見どころは「かわいい」と「奇想」だ。とくに仔犬のかわいさには誰もがハートを射抜かれてしまうはず。
文・青野尚子
辻惟雄氏の著書『奇想の系譜』にも取り上げられている江戸時代中期の絵師、長沢蘆雪。その蘆雪の、東京では初めての個展が開かれる。府中市美術館で長年にわたって開かれてきた「春の江戸絵画まつり」の最終回を飾る展覧会だ。
長沢蘆雪は1754年(宝暦4年)、京都に生まれ、円山応挙のもとで腕を磨いた。写生を重んじた応挙ゆずりの画力に加え、大胆なアイデアや構図で、数多くの応挙の弟子の中でも抜きん出た存在となる。和歌山県・無量寺の襖絵の仕事では高齢かつ多忙だった応挙の名代として《竜虎図襖》を手がけ、その才能を発揮した。彼の生涯には謎が多いが、酒好きで豪放磊落な性格だったとも言われる。
蘆雪作品が大集結するこの展覧会の見どころは「かわいい」と「奇想」だ。とくに仔犬のかわいさには誰もがハートを射抜かれてしまうはず。応挙も愛らしい犬の描写で知られるが、蘆雪の犬は笑っているように感じられて一段とかわいい。
「奇想」ではやはり、無量寺で蘆雪が描いた虎と龍の襖絵に注目だ。虎はすごい勢いで前方に飛びかかっている。龍は稲妻を従えて鋭い牙を見せる。どちらも恐ろしい生き物であるはずなのに、どことなく愛嬌が漂うのも蘆雪らしい。
奇想だけどかわいい、蘆雪の絵を東京でこれだけまとめて見られるチャンスはそうない。ラブリーな仔犬に、怖そうだけど愛らしい虎に会いに行こう。
『春の江戸絵画まつり 長沢蘆雪』
府中市美術館 3月14日(土)~5月10日(日)
蘆雪作品とあわせて禅宗の世界の美術や、「形を崩す」ことに意味があるとされた文人画・俳画も展示。前期・後期で大幅な展示替えあり。観覧券には2回目は半額になる割引券がついている。
府中市美術館(東京都府中市浅間町1・3 都立府中の森公園内) TEL:050-5541-8600(ハローダイヤル) 10時~17時 月曜休(5月4日は開館) 観覧料一般800円ほか
『クロワッサン』1161号より
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