俳優・黒谷友香さんの着物の時間──日本の伝統文化をもっと知り、内面を充実させて着物を楽しみたい
撮影・青木和義 ヘア&メイク・藤原リカ(スリーピース) 着付け・小田桐はるみ 文・大澤はつ江 撮影協力・kobikiギャラリー+クラフトショップ
母の着物を「切り継ぎ」の手法で私のサイズに作り直しました
「この着物は、母が結婚する際に嫁入り道具のひとつとして誂えたものなんです」
と俳優の黒谷友香さん。
紺地に梅などが描かれた小紋で、帯を替えることでカジュアルにも、少しあらたまった席にも着て行ける。
「いつでも着ていいから、といわれていたのですが……。母は女性の平均的な身長なのに対し、私は170cmなので、身丈や袖丈などが合わず着ることができませんでした」
ところが3年前に、その着物が着られるような企画が持ちあがる。
「呉服メーカーの着物ブランドのイメージモデルを務めたときに、サイズが合わなかったり生地が傷んでしまった着物に手を加えることで、活用できるようにアップサイクルして着物を楽しもう、という企画が起こりました。着物を箪笥の肥やしにするのではなく蘇らせる。すごく素敵なことだと思い、母に話すと、『だったらこの着物を使ったら』と譲ってくれたんです」
その着物には黒谷さんのサイズに合わせて「切り継ぎ」の手法が施された。
「従来の着物に別の生地を継ぎ足すことでサイズを修正する手法だそうです。聞くところによると、異なる素材や模様の生地を繋ぎ合わせて再び活用できるようにする手法で、昔からあるそうです。まさに先人の知恵ですね」
胸元や上前に見える黒地に露芝文様の部分が継いだところだ。別の生地なのに違和感なく従来の着物に溶け込み、それが付け下げの柄のように見えるところが洒落ている。
「着物が蘇り、着られるようになるなんて素敵なことですよね。この企画では、母が白大島も譲ってくれたので、こちらは傘と出し帛紗にしました。世界にひとつだけの日傘なんて贅沢です」
近年、友人に誘われてお茶のお稽古に通いはじめた黒谷さん。
「出し帛紗も活用しています。お茶に向き合っていると五感が研ぎ澄まされるような気がします。静寂の中でお湯が沸く音、抹茶の香り……。そして先生の流れるような所作の美しさ。なにもかもに魅了され、同席しているだけで感性が磨かれます。きちんとお点前を行えるようになりたい。もちろん着物を凛と着こなして、が目標ですね」
これからも楽しんで着物を着たい、という黒谷さんだが、着物に対して思うことがある。
「仕事で京都などに行くと海外の方たちが楽しそうに着物で散策する姿をよく目にします。それを見たときに、はたして私は日本の伝統衣裳を心から楽しんでいるのかな? と」
ルールに縛られているように感じることもある。
「もちろん、基本的なことがわからないと、美しく着こなすことはできないかもしれませんが、それを踏まえて自分らしく、楽しんで着こなしたい。そのためにも日本の伝統文化をもっと知らないといけないのではないでしょうか。伝統文化を知ることで、自身の充実に繋がり、内面の美しさが引き出され、着物の着こなしにもプラスになるのでは、と思っています」
『クロワッサン』1158号より
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