作家・角田光代さんの2025年ベスト映画・ドラマ──“ひたすら信じる力”に惹きつけられる
優れた物語に触れる時間は、せわしない日常を忘れさせてくれるもの。作家・角田光代さんの「2025年ベスト映画・ドラマ」は、ひたすら信じる力”に惹きつけられる。
イラストレーション・村上テツヤ 文・小沢緑子
コロナ禍を機に韓国ドラマを見始めて、今や著書『韓国ドラマ沼にハマってみたら』もある角田光代さん。韓国ドラマが愛されるのは“美しいもの、純粋なものなどをひたすら信じる力”があるからという。「済州島を舞台にしたある家族の1950年代から2025年までを描く『おつかれさま』は、大きな事件があるわけではないのにとにかく見せます。夫婦愛に泣き、親子愛に泣きました。幸せに生きるということは、じつにシンプルなことなのではないかと思わせてくれました」。『未知のソウル』は、性格が正反対の双子が、あることをきっかけに互いに入れ替わって生活を始める物語。「二人の思春期からを丁寧に追い、挫折とコンプレックス、家族への屈託を拾い上げて描き、それぞれが生きることの意味を見いだしていく姿には突飛な設定ながら非常に説得力がありました」。『未完成の映画』は、コロナ禍の中国・武漢近郊を舞台にしたフィクション。「あのときの空気が濃厚に思い出され、また、中国ではいったいどんなふうだったのかがわかって、ものすごく見応えがありました」
ドラマ『おつかれさま』
済州島に生きる、海女の娘で気丈な少女エスンと、魚屋の息子で一途で誠実な幼なじみの少年グァンシク。挫折と成功を繰り返しながら互いに支え合って生きていく二人の姿を描く感動のヒューマンストーリー。監督:キム・ウォンソク出演:IU、パク・ボゴムほか
ドラマ『未知のソウル』
外見はそっくりだが、性格も生き方も正反対の双子のミジとミレ。人生の危機にぶつかったミレにミジは、しばらく人生を入れ替えることを提案する。パク・ボヨンが双子役で1人4役を務める。脚本:イ・ガン 出演:パク・ボヨン、パク・ジニョン、リュ・ギョンスほか
映画『未完成の映画』
10年前に撮影した未完成の映画を完成させるため、監督、スタッフ、キャストは中国・武漢に近い町のホテルに集う。撮影中コロナが蔓延、ロックダウンで全員ホテルの部屋から出られなくなって……。監督:ロウ・イエ 出演:チン・ハオ、マオ・シャオルイほか
『クロワッサン』1155号より
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