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「必ず霧が晴れる日がくる」──女性医療のパイオニア・天野惠子さんに聞く、更年期からの女性の体

人生100年時代、更年期も女性の人生の通過点に過ぎません。不調や不安が尽きないこの時期、正しい知識と情報が役立ちます。この難所を乗り越えた先には、笑顔の日々が待っていると信じて。

撮影・黒川ひろみ ヘア&メイク・遠藤芹菜 イラストレーション・髙橋あゆみ 文・小沢緑子

天野惠子(あまの・けいこ)さん 内科医。女性外来の創設に尽力し普及させた、女性医療のパイオニア。2009年から埼玉・静風荘病院 特別顧問。性差医療情報ネットワークの理事長も務める。近著は『81歳、現役女医の転ばぬ先の知恵』
天野惠子(あまの・けいこ)さん 内科医。女性外来の創設に尽力し普及させた、女性医療のパイオニア。2009年から埼玉・静風荘病院 特別顧問。性差医療情報ネットワークの理事長も務める。近著は『81歳、現役女医の転ばぬ先の知恵』

一生を通して自分の体をいたわって

82歳の今も現役で、週2回、女性外来でさまざまな症状に向き合っている医師の天野惠子さん。朝は4時半起床、その後に入浴、ハーネスをつけて愛猫の散歩、朝食、メールチェックや執筆なども行い、診察のある日は9時に出勤し17時に退勤。夜は遅くても21時に就寝するのが、毎日を元気で過ごすためのルーティンだ。

「生活習慣で大事にしているのは早寝早起きです。この基本が乱れると体のリズムが崩れてしまう。日本人は断りベタで何でも無理をしがちでしょう。でも私は100歳になっても医師の仕事を続けたいので健康が第一。そのためにも今は夜が遅くなりそうなお付き合いは講演会でも断るの。このときだけ年齢を言い訳にして、『20時から21時には寝ていますから』って(笑)」

その天野さんは「私以上に重い症状の人はそういない」と語るほど、壮絶な更年期症状を体験した。40代初めに一年じゅう風邪をひいているような調子の悪さを感じたのが始まりで、48歳で生理時の過多出血、50歳で子宮筋腫の治療により子宮と卵巣を摘出した。

「症状がおさまり青空が広がったような気持ちでしたが、その1カ月後から尋常でないほどの発汗、起きていられないほどの倦怠感、下半身のしびれ、極度の冷えなど、50代は更年期症状に次々と見舞われて大変でしたよ。症状がひどいときは体をひきずるようにして出勤するほどで、患者さんを2人診察したら少し横になって休むことの繰り返し」

今から30年ほど前の当時、さまざまな治療法を自身で試したが思わしくなく、更年期障害に対する医学的エビデンスの少なさにも愕然としたというが、その経験が自分で女性外来を作ろうと取り組むきっかけにもなった。

必ず霧が晴れる日がくる。更年期にも終わりがくるので一人で抱え込まない

更年期症状の治療法については、「子宮がある人もない人も1カ月だけ、女性ホルモンのエストロゲンを単独で使うERT(エストロゲン補充療法)を試す価値があります。それで改善するようならほかの病気ではなく、エストロゲンが低下することで生じる更年期症状と判断できますので」。

イライラ、不眠、うつ症状など、メンタルに強く症状がでる場合があるが、「診察を重ねて思うのは、更年期の女性は仕事、家庭、親の介護など周りから求められる役割が多く、それも心理的負担になりやすいこと。それを踏まえて、患者さんに更年期のホルモン変化が心身に与える影響を説明すると不調の背景がわかり、それだけで表情が見違えるほど明るくなる人もいます。『更年期をはじめ、一生を通して女性の体がどう変わっていくか』の正しい知識を得ることが、いかに心の安定に必要なのかよくわかりますね」。

「必ず霧が晴れる日がくる」──女性医療のパイオニア・天野惠子さんに聞く、更年期からの女性の体

誰もが通る道である更年期。健やかに元気に乗り越えるための方法とは?

「今まさに症状がつらい人に伝えたいのは、『更年期には必ず終わりがくる』ということです。更年期の症状は個人差が大きい。10人のうち4人はどんな治療をしても思うように改善しない重症なタイプで、私もそうでしたが59歳になったある日突然、霧が晴れるように症状が消えました」

自分の体や心により敏感になり、それに対処していくことも大切という。

更年期以降も自分らしくよりよい人生を生きるために、「自分が自分の主治医になる」

「たとえば眠れない状態が続くなら、その原因は必ずあります。更年期のほてりやのぼせからくるもの以外に、心配ごと、ストレスなど心当たりがあれば、リラックスできるセルフケア法を行って取り除く工夫を。『自分が自分の主治医になる』ことも大切です」

天野さん自身、更年期のつらい症状に効果があったというのが入浴。

「とにかくお風呂に入った後の数時間は体が温まり、調子がよかった。今も毎日、朝と夜に15分ずつ湯船にゆっくりつかる温活は欠かしません」

また、更年期以降は、加齢による体の変化を否応なく感じるときもあるが、「だからこそ、自分で健康を保つために調節を。年齢の節目に体の機能が落ちてきたと思うことは私もありますが、もともと年齢を意識しない生き方をしてきたので、年を重ねるたびに仕事も人生も経験値はどんどん上がるし、いいことしかありませんよ」。

更年期とそれ以降の長い人生後半を健やかにより楽しむために常に前向きに、と天野さんは力強く助言する。

「私は75歳から体力や筋力の維持のために筋トレを始め、今も週2回パーソナルトレーニングに通っています。更年期の症状に苦しんだ50代より、今のほうが心身ともに絶好調です」

『クロワッサン』1152号より

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