『ハウスメイド』フリーダ・マクファデン 著 高橋知子 訳──家事代行の仕事先の家庭が抱える秘密
文字から栄養。ライター・瀧井朝世さんの、よりすぐり読書日記。
文・瀧井朝世
衝撃的な展開が待っているスリラーである。
仕事が続かず、車上暮らしを送るミリーは、幸運にも裕福な家庭の夫人、ニーナに気に入られて住み込みのハウスメイドの仕事を得る。しかし、庭師のイタリア人青年はミリーに何かを訴えてくる。聞き取れた「ペリコロ」という単語を検索してみると、その意味は“危険”だった──。
ミリーに与えられたのは豪邸の中の狭い屋根裏部屋。家の中は散らかり放題で、一人娘のセシリアは気難しく、ニーナは言いつけを二転三転させて翻弄させる。しかし前科のあるミリーにとって、この仕事を失うわけにはいかない。夫のアンドリューが気にかけてくれることだけが、心の安寧だ。
なぜアンドリューがこの我儘な妻との結婚生活を続けているのか。
ニーナは過去に精神を患っていたというが、今も治療が必要な気がする。この夫婦関係にいったいどんな秘密があるのかと思いながらページをめくっていたら、まあ途中でびっくり仰天ですよ! めっちゃ怖い展開となる。
訳者あとがきでさらに驚いたのが、本作がシリーズ化されていること。この結末に、どんな続篇がありうるというのか。読まねば。
『クロワッサン』1152号より
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