何歳になっても“メイクの発信”は続けたい──メイクセラピスト・大西直実さん【家計を守る、60歳以降の働き方】
撮影・土佐麻理子 文・小沢緑子
何歳になっても“メイクの発信”は続けたい
“るん大西”の名前で、大人女子のためのメイク動画をSNSで発信するメイクセラピストの大西直実さん。メイクを仕事に、と思ったのは50代からだ。
「それまで子育てしながらトラベルジュエリーを扱う仕事で起業していましたが、東日本大震災で中断。高齢者にお弁当を作るボランティアをしていたとき、休憩時間にメイクをしてあげたらとても喜ばれたんです」
メイクの力を実感した大西さん、メイクセラピーという心理カウンセリングを取り入れたメイク術があることを知り、一念発起して資格を取得。個人レッスンやセミナー開講など順調にキャリアを積んでいたが、今度はコロナ禍で仕事が困難に。
「でも、カウンセリングの経験があることからクリニックで患者さんの相談を聞く仕事に誘ってもらって。今は何が起こるかわからない時代、『仕事(=収入)のポケットは複数持っていたほうがいい』と思いました」
その後、思いがけず60歳で離婚。2年ほど立ち直れなかったというが、「『このまま人生が終わるのは嫌だ』と自分を鼓舞するつもりでインスタにメイク動画を投稿するとそれが評判に。
「『私もまだ誰かの役に立てるんだ』と勇気をもらいました」
以来、YouTubeデビューも果たし、インスタの短い動画では伝えきれないコンテンツを、月2回ほどアップ。
「メイク動画は撮影も編集も知識ゼロから始め、ひとりでコツコツ勉強しながら作っています。この年齢で、新しいことを知るのも刺激になっています」
また、再生回数によっては、何百円などお小遣い程度の収益になるのも励みになるという。
「自分で納得がいくまで考えて作った動画でわずかでも稼げるのは、精神的にも経済的にも“自立できた”ように感じました。メイクは一番やりたかった仕事だし、その動画の発信なら70代、80代になってもマイペースでできる。長くずっと続けていきたいと思っています」
大西さんの経歴
20~30代
メーカーや外資系銀行に勤務。29歳で結婚。2男1女の育児をしながら、週1回ほど派遣で働く。
42歳
子育てがひと段落。専業主婦からトラベルジュエリーの卸業・個人販売で起業。
50歳
東日本大震災を契機に「メイクの力」を確信。
55歳
メイクセラピーアドバイザーの資格を取得。
60歳
コロナ禍に思いがけず離婚。その後2年間は仕事以外は家に引きこもり満身創痍の日々。
62歳
“るん大西”の名前でインスタに上げたメイク動画が好評に。
63歳
YouTubeで「大人女子 なりたい自分になる」を発信中。
『クロワッサン』1146号より
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