【粋な東京パワースポット】高尾稲荷神社(箱崎)──恋に殉じた悲劇の花魁にはたくさんの願いが
いざという時にお参りする神社やお寺は江戸の人々にはどんな存在だった? 人気の社寺を実際に訪れ透かし見えたのは、嗚呼、花のお江戸の景色かな。──江戸文化研究家の滝口正哉さんとコラムニスト・辛酸なめ子さんが江戸の代表的な社寺へ。今回は、箱崎の高尾稲荷神社を訪ねた。
撮影・青木和義 イラストレーション・辛酸なめ子 構成&文・堀越和幸
高尾稲荷神社(箱崎)
中央区日本橋箱崎町10-10 https://takaoinari.tokyo/
恋に殉じた悲劇の花魁にはたくさんの願いが
日本橋は箱崎町、隅田川にかかる永代橋の程近くに高尾稲荷神社はある。この神社が珍しいのは、江戸時代に名を馳せた遊女、2代目高尾太夫を祀っていることであり、しかもご神体として安置されているのは彼女の頭蓋骨であるという。
「高尾太夫は花魁道中ができるほどのスターでした」(滝口さん)
美貌と才能を兼ね備えた高尾を、ある日、仙台の殿様である伊達綱宗(だて・つなむね)が大金を積んで身請けを図る。が、すでに意中の人がいた彼女はそれに従わなかった。怒った綱宗は隅田川の楼船(ろうせん/屋形船)上で彼女を斬殺し、川中に捨ててしまった。その遺体が北新堀河岸に漂着した。
「以来、高尾を偲ぶ人がここを訪れ、独特の信仰が生まれたようです」(滝口さん)
「ご利益としてはどんなことがあるんでしょうか?」(辛酸さん)
「頭蓋骨なので頭痛や頭髪にまつわること、高尾は知識が豊富だったので、技芸や学問の上達を願う人も多いそうです。あとは恋愛でしょうか」(滝口さん)
「そんなにいろいろ……。ほかと比べると祀られているのは現代に近い人なので、心の声のやりとりがしやすいのかも」
そう言うと辛酸さんは祭壇に向かって静かに手を合わせたのだった。
お参りついでにこんなお土産
『京菓子司 壽堂』の黄金芋
明治30年代に考案された黄金芋はニッキが香る黄身餡の和菓子。1個260円。
中央区日本橋人形町2-1-4 TEL:0120-480-400 (営)9時〜18時30分(月〜土曜)、9時〜17時(日曜・祝日) 不定休
『クロワッサン』1145号より
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