どこよりも日本で愛された「渋谷系」の聖典——『Roger Nichols & The Small Circle of Friends』(ロジャー・ニコルス&ザ・スモール・サークル・オブ・フレンズ)
高橋芳朗の暮らしのプレイリスト。今回は、ロジャー・ニコルス&ザ・スモール・サークル・オブ・フレンズが1968年に発表した同名のアルバム。ピチカート・ファイヴの「そして今でも」「大都会交響楽」などからは、ロジャーに対するリスペクトがはっきりと聴き取れます。
文・高橋芳朗
主に1960年代後半~1970年代前半にかけて活躍したアメリカの作曲家、ロジャー・ニコルスが逝去しました。84歳でした。
ロジャーの代表作としてはカーペンターズに提供した「We’ve Only Just Begun」や「Rainy Days and Mondays」などのヒット曲が有名ですが、ここ日本においてとりわけ人気が高いのがロジャー・ニコルス&ザ・スモール・サークル・オブ・フレンズとして発表した1968年発表の同名のアルバム。当時現地ではまったく話題にならなかったそうですが、約20年後の1987年、世界に先駆けて日本でCD化が実現すると1990年代の「渋谷系」と呼ばれるムーブメントのなかで絶大な影響力を持つことになります。
その渋谷系を牽引し、ロジャーの音楽の素晴らしさを日本に広めた立役者のひとりが小西康陽さん。彼が率いたピチカート・ファイヴの「そして今でも」「大都会交響楽」などからは、ロジャーに対するリスペクトがはっきりと聴き取れます。
そういえばピチカート・ファイヴの3代目ボーカリスト、野宮真貴さんは2015年リリースのソロ作『野宮真貴、渋谷系を歌う』でロジャーの「Love So Fine」を思い入れたっぷりにカバーしていました。渋谷系の本質を「既存のポップミュージックの再発見/再構築」とするならば、ロジャーが仲間たちと共に作ったアルバムはまさにその聖典のような存在だったのです。
『クロワッサン』1145号より
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