いま改めて評価したい多彩な歌手活動 『アワー・コネクション』(いしだあゆみ&ティン・パン・アレイ・ファミリー)
高橋芳朗の暮らしのプレイリスト。今回は、いしだあゆみさんの多彩な歌手活動について。
文・高橋芳朗
3月11日、いしだあゆみさんの突然の訃報には驚かされました。昨年には映画『室井慎次』二部作で元気な姿を見せていただけにショックを受けているファンは多いでしょう。
生前は俳優のイメージが強かったいしださんは、1964年に歌手としてデビュー。1968年の「ブルー・ライト・ヨコハマ」の大ヒットで一躍スターの座に躍り出ました。
その後、1980年代をもって音楽活動は事実上休止。1990年代には「私の気持ちの99.9%は芝居にある」と発言していたいしださんですが、彼女が残した素晴らしい音楽作品は以降も新しい世代に語り継がれていくことになります。
特によく知られているのが、細野晴臣さん擁するティン・パン・アレイと共に作り上げた1977年の『アワー・コネクション』。このアルバムはたびたび再発売されたことによってシティポップの名作としての評価を確立。2022年には特に人気の高い2曲、アレサ・フランクリンを意識したという「私自身」とレゲエのリズムを取り入れた「バイ・バイ・ジェット」をカップリングしたドーナツ盤が発売されています。
その他では、筒美京平さん作曲の4曲を含むソフトロック色の強い1972年作『ファンタジー』も充実の内容。クロディーヌ・ロンジェ「絵本の中で」のカバーやフレンチポップ調の「しあわせ」など、いしださんの艶っぽいウィスパーボイスをたっぷり堪能できます。
『クロワッサン』1141号より
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