ハーブの選び方や使い方など基礎知識と、使いやすい8つのハーブの効果や特徴。
撮影・土佐麻理子 イラストレーション・タムラフキコ 文・小沢緑子
ハーブを使いこなす基礎知識。
ハーブもフレッシュ(生)とドライ(乾燥)を料理や用途で使い分けよう。「ドライハーブは今はどのメーカーも鮮度を保つために容器を工夫していて、香りも品質も格段にアップしています。使い勝手がいいので常備もおすすめ」
選び方
「フレッシュは、葉物野菜と同じで葉茎がピンとして元気があるなど鮮度で選びます。その意味では家庭菜園で栽培している人は最強ですね。ドライタイプは最初は使い切れる少量を。空気に触れないよう密閉蓋で日の光を遮る容器入りが、購入後も鮮度を保ちやすい」
●ドライ
●フレッシュ
保存方法
「ハーブもドライタイプはスパイス同様、高温多湿、直射日光が当たる場所での保存は厳禁です。フレッシュの場合、一度に使い切れないなら湿らせたキッチンペーパーに包んで容器に入れて冷蔵保存を。葉に元気がないと思ったら、花と同じように水揚げをすると復活します」
特に葉茎が柔らかいハーブはデリケートでしなびやすい。水を入れたコップにしばらく挿して元気が出てきたら料理に使って。
霧吹きなどで湿らせたキッチンペーパーに包み、蓋付きかラップをかけた容器、密閉袋へ。保存は冷蔵室、野菜室のいずれも可。
使い方
「フレッシュハーブはグリルや煮込み料理では1本そのままの姿で使うことがありますが、生のまま使うなら『ちぎる』『たたく』『潰す』方法で香りを引き出してから使うとより楽しめます」。その3つの方法と簡単に作れるおすすめレシピを紹介。
【ちぎる】
右
「ちぎると香りが閉じ込められた葉の組織が壊れて、香りが立ちやすいです。料理以外に、葉をちぎってから水に浸けてハーブウォーターにするのも爽やか」
左・ハーブウォーター
水にちぎったハーブ(おすすめはペパーミント、レモングラス、ローズマリー)を入れてしばらく置く。冷たくするなら蓋やラップをして冷蔵庫へ。
【たたく】
右
「葉を手のひらでパンとたたくだけでも香りは立ちますが、ソースやドレッシングに使うなら包丁でたたいてみじん切りに。香りとともに、サラダ感覚の食感が楽しめます」
左・ハーブソース
パクチー6本、ディル4本、ミントの葉10枚くらいを包丁でザクザク切ってから、みじん切りの状態になるまでたたく。ボウルなどにオリーブ油大さじ5、レモン汁大さじ3、胡椒少々と一緒に加えて混ぜ合わせる。1週間ほど冷蔵保存可。
【潰す】
右
「ブレンダーがなくても、すり鉢とすりこ木で潰すだけで充分香りが立ちます。舌触りよく滑らかなペースト状にしたいときは、ブレンダーかミキサーで仕上げて」
左・バジルペースト
バジル40gの葉をちぎり、すり鉢で潰す。松の実30g、ガーリック(ドライ)小さじ、パルメザンチーズ30g、オリーブ油大さじ5、塩小さじを混ぜてさらにすり潰す(ブレンダー可)。2〜3日冷蔵保存可。
【ドライハーブが余ったら】
ハーブソルト
余ったドライハーブ(写真はオレガノ、タイム、マジョラム)を好みの塩と混ぜ合わせるだけ。無駄にならず、肉や魚の調理の際に重宝する。
使いやすい8ハーブ
●ディル
柑橘のような爽やかさ。
◎特徴
葉茎が羽のように細く柔らか。ディルという名前は〝鎮める〞という意味の古いスカンジナビア語に由来し、古代から健胃、腸内のガス抜き作用があるとされる。
◎使い方
柑橘のような甘みのある爽やかな香りで、北欧ではサーモンを使った料理と合わせるのが定番。「魚のハーブと呼ばれていて、淡白な白身魚、ホタテ、タコなどの魚介と相性が抜群です。マリネに加えるほか、フライパンで焼いたり蒸したりするときに添えるとふわっと香ります」
●ミント
香りの強さが種類で異なる。
◎特徴
同じミントの清涼感でもペパーミントはメントールが主成分の強い香り、スペアミントはカルボンが主成分の穏やかな香り。健胃、鎮静作用などが期待できる。
◎使い方
どちらのミントもハーブティーをはじめとするドリンクやデザートの香り付けによく使われる。「フレッシュタイプは刻むかブレンダーで撹拌してミントソースにすると、デザートにも料理にも使いやすい。肉料理に使うならガーリック、塩、チーズと一緒にグリルするのも合います」
●ローズマリー
〝若返りのハーブ“と珍重。
◎特徴
中世ヨーロッパでは〝若返りのハーブ〞として珍重。含まれるポリフェノールの一種ロスマリン酸に強い抗菌・抗酸化作用があり、美容効果も期待される。
◎使い方
すっきりした強い香りは肉や魚料理と好相性で、古くからヨーロッパでは羊肉などクセのある肉の臭み消しにも使われてきた。「ほかにもほくほくした食感のある野菜の下茹でに使っても。粉ふきいもを作るときに一緒に入れて茹でると香りが移り、じゃがいもの青臭さがとれます」
●コリアンダー
葉、茎、根も強く香る。
◎特徴
タイ語でパクチー、中国語で香菜(シャンツァイ)と呼ばれ、タイ、ベトナム、中国などアジア圏の料理に使用。独特の強い香りには食欲を増進させる成分が含まれる。
◎使い方
葉、茎、根の部分にも強い香りがあり全草が食用に。ちなみに種はスパイスとして利用。料理のトッピング、スープやサラダ、炒め物、鍋など幅広く活用できる。「刻んで加えるだけでエスニック風味に。麺類の薬味をはじめ、醤油と混ぜて餃子のタレにするのもおすすめです」
●レモングラス
ハーブウォーターに使っても。
◎特徴
イネ科のハーブでイネに似た細長い葉をもつ。レモンとよく似た香りは、レモンと同じシトラールが主成分。殺菌・抗菌に優れるほか、健胃、消化促進作用も。
◎使い方
トムヤムクンをはじめ、タイやベトナム料理に多用。葉に切り込みを入れたり、刻んで使うと香りがより立つ。「サラダチキンを作るときに一緒に蒸したり茹でたり、普段の料理の風味付けにも活躍します。酢やオイルに漬けたり、水に浸けてハーブウォーターにするのも爽やかです」
●バジル
トマト料理に欠かせない相棒。
◎特徴
ヨーロッパではハーブの王様と呼ばれ、特にイタリア料理で多用。シソ科のハーブ特有の爽やかな香りがあり、食欲増進、消化促進、鎮静などの作用もある。
◎使い方
甘く爽やかな香りは、特にトマトと相性抜群。サラダ、パスタ、ピザなど、トマトを使った料理の定番ハーブ。「生の葉は水に浸すと傷んで黒ずみやすいので、水洗いはしないこと。汚れを落としたいときは、使う直前に湿らせたキッチンペーパーで優しく拭き取りましょう」
●セージ
古来〝不老長寿のハーブ“。
◎特徴
古代ギリシャやローマ時代から薬草として珍重され、不老長寿のハーブと呼ばれた。抗酸化作用が強く消化促進のほか、優れた抗菌作用でうがい薬にも利用。
◎使い方
爽やかな香りと苦味、渋味が特徴。豚肉や脂がのった魚料理と好相性。「セージも水に浸けてハーブウォーターに。気分がスッキリしないときも、香りでリフレッシュできます。ちなみにセージは茎葉にふわふわした白い毛が生えているほうが鮮度も品質も高いです」
●タイム
イタリアを代表するハーブ。
◎特徴
独特のすがすがしい香りとほろ苦さがあり、古くからヨーロッパで薬用、食用として利用されてきた。葉に含まれる香り成分チモールは殺菌・防腐作用が高い。
◎使い方
煮込み料理に使うブーケガルニに使用されるタイム。「トマトソースやラタトゥイユを作るときに加えると日持ちがよくなりますし、風味も増します。ほかのハーブも一緒に使うなら、イタリアの代表的なハーブ、マジョラム、オレガノも同量ずつ、がおすすめ」
『クロワッサン』1122号より
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