洗面所、ダイニング、リビング…DIYと小さなリフォームのアイデアを紹介。
家全体を直すのは大変ですが、暮らしながら手を入れていく小さな工事であれば気軽だし、DIYで出来ることもたくさんある。
生活の中のちょっとした不便を解決する、小さなリフォームやリサイズのアイデアを紹介します。
撮影・徳永 彩 文・黒澤 彩
工夫を積み重ねて、こうだったらいいのにな、を楽しく実現。
東の窓から明るい陽が差し込むリビング。新築もしくはリフォームしたてといわれればそんな気もする、気持ちのいい部屋の家主は、ファッションブランド〈LOISIR〉のデザイナー、前田敬子さん。この家に引っ越してきたのは20年以上も前なのだそう。では、リフォームしたのは?
「家全体をリフォームしたことは一度もありません。最近だと洗面所まわりがけっこう大がかりでしたが、それ以外は、住み始めてからずっと、少しずつ手を加えてきました。とくに計画もなくて、暮らしながら、ここはこうだったらいいなとか、こう変えてみようかなとか、思い立ったら即リフォーム(笑)。ちょっとした気分転換にもなっています」
もはやペンキ塗りはお手のもの。簡易な棚やテーブルを作ったり、2匹の猫たちのためにキャットステップを設けたり、少し工夫して手を動かしてみることで、暮らしやすさは格段にアップする。
「やってみると、自分でできることもけっこうあるんです。ホームセンターの人も親切にいろいろ教えてくれますし。どうしても自分でできないところは業者さんに。簡単な工事なら、身近な工務店に頼むと費用も抑えられます」
リフォームは人生の一大イベントと思いがちだけれど、暮らしながら手直しする前田さんのスタイルなら、誰でも、どんな家でも真似できそう。次ページからは、取り入れてみたいアイデアの数々を部屋ごとに紹介しよう。
[リビング]人が集う部屋だからくつろげる余裕と開放感を大切に。
家のなかでもっとも広いLDK。住み始めて真っ先に、この部屋の窓枠を白く塗り替えたそう。
「大きめの窓枠で、パイン材の節が目立っていたので、部屋がどことなくログハウスっぽい感じだったんです。それも素敵だったのですが、白く塗ることで明るい印象になって、しっくりきました」。
さらに、天井の板を外す工事も。30cmほど天井が高くなることで、いちだんと開放感が生まれた。
「家にくる友人たちに、ここでゴロゴロくつろいでほしいから」と、ソファやベンチの配置を変えてみたり、ローテーブルを自作したりと工夫は尽きない。その場所で過ごす時間をイメージすることが、前田さん流リフォームのコツのようだ。
爪で傷んだ壁紙を 腰板でカバー。
ローテーブルは塗り替えてキャスターを付けたDIY。
天井高を上げて開放感を。
窓枠は白いペンキで明るい雰囲気に。
階段のカーテンで冷暖房の効率アップ。
[ダイニング]カウンターでキッチンを仕切り、 景色をすっきりと。
2階のリビングとダイニングは同じ空間だが、テーブルやカウンターによって、それとなくコーナーが分けられている。
「キッチンカウンターは、家具屋さんに作ってもらったものです。リビング側から見たときに流し台や家電類が隠れるようにしたかったので、高さは自分で測って決め、絵を描いてイメージを伝えました」。
サイズの合わない既製品を置くよりも、オーダーメイドでリフォームをすればスペースを無駄なく使える。ダイニングテーブルも、理想のサイズや質感のものが見つからず、それならばとDIYで。
「テーブルを大きくしたくて、後から両端に板を継ぎ足しました。こういう家具のリフォームも、けっこう気軽にやってしまいます」
カウンターの内側は収納にフル活用。
見せたくないものはブラインドで目隠し。
縦横に板を継ぎ足して一回り大きな食卓に。
〝あったら便利“を形に。引き出しも付けてみる。
カップやティーポット用の棚を自分に合った高さに。
[洗面所]不便を解消し、 家の中でいちばん好きな場所に。
家じゅうを少しずつ手直ししてきた前田さんが、常々、「ちょっと使いにくいな」と感じていたのが洗面所。風呂が壊れたのをきっかけに、一念発起して水回りの大がかりなリフォームをした。
「以前はトイレと洗面所は別々になっていて、トイレがやけに広いわりに洗面所がとても狭かったんです。だから壁を抜いて一つの空間にし、リビングと同じように天井を上げてもらいました」。
工事によって、広々と、贅沢な気分になれるパウダールームに。チェストとスツールを置いてもなおゆったりしているので、ここでメイクや身支度を整える時間がとても好きになったそう。ストレスの元になっている場所ほど、リフォームの効果を感じられる。
洗面所とトイレを繋いでパウダールームに。
洒落たタオルかけはまさかのDIYパーツ!?
タオルや洗濯物をかけられるシンプルなポールを設置。
好きな高さに変えられる可動式の棚を活用。
ごく小さなスペースも収納に活かして。
洗面所を広げたことで壁の一部が斜めに。
これからも続く、心地いい家づくり。
部分的なリフォームなら案外手軽にできそうだと思わせてくれる前田さんの家づくり。デッドスペースに棚を作ってみたり、壁に色を塗ってみるだけで、生活が変わるのを実感できるかもしれない。
「ペンキ塗りはとくにおすすめです。最近の塗料は乾きやすくて失敗なくできますよ。それに、失敗してもまた塗ればいいし!」。
家づくりに完成形はなく、これからも少しずつ手をかけ、愛着を持って住み続けていきたいと前田さん。コロナ以降、在宅時間が増えたことも、あらためて家を見直すきっかけになったそう。
「仕事も落ち着いてできるし、帰ってきたら心からほっとする場所。今、この家に住んで以来、いちばん居心地のよさを感じています」
住まいに合わせて組み替えれば、棚は万能に。
ところどころ板を付け替え、猫に楽しく、使い勝手よく。
目隠ししたいところは簡易な扉を後付け。
ペンキで好みの色に塗り替えて、気分一新。
『クロワッサン』1112号より