災害時の命綱、水の確保術を危機管理アドバイザーに聞いた。
災害時に慌てないために、覚えておきたい知識をお届け。
撮影・黒川ひろみ イラストレーション・山口正児 文・一澤ひらり
水は命の源。備蓄の知恵と断水時に役立つグッズを紹介します。
Q1.水は1人一日3L必要と聞きますが、わが家は5人家族。最低限どれだけの水を用意しておくのがいいのでしょうか。
A.在宅避難なら10日分のストックは必要。
家族5人で10日分なら2Lのペットボトル75本分もの量になりますが、わが家では発想を変えて、災害時も飲みたいものを飲もうということで、水だけでなく各自の好きな飲み物をケース買いしています。
子どもたちはジンジャーエールとゼリー飲料、夫はトマトジュース、私は豆乳というように、家族が好きな飲み物をケース買いすることによって、なかば義務感でやっていた水の備蓄が、ハッピー備蓄に変わりました。防災は楽しむことも必要です。
日頃から冷蔵庫に飲料水を多めに入れて、冷凍庫にチューチューアイス(氷菓子)を凍らせ、常に製氷もしておく。これも非常時の大切な水分となります。
Q2.断水時、水はどこでもらえるのでしょうか。 また、どんなものを用意したら重い水を運べるでしょうか。
A.災害時給水ステーションや給水車などです。
水は自治体の災害時給水ステーションといった応急給水拠点でもらえますし、給水車が巡回することもあります。その情報は自治体のホームページやSNS、防災無線、避難所の掲示板などで伝えられますので、要チェックです。
給水にはウォータータンクや給水袋を用意しましょう。水は重いですが、家族で運べるなら台車があると便利です。給水袋がなければ、ゴミ袋を2重にして水を入れてもらい、リュックやキャリー、スーツケースなどで運ぶ方法もあります。
マンションでエレベーターが止まっている時は階段を使うのでリュックがおすすめ。ただ自分が運べる重さにして無理をしないことです。
Q3.普段からお風呂の残り湯は溜めておいたほうがいいですか?
A.大地震では排水できず、残り湯は使えません。
マンションの場合、地震の揺れで排水管が割れたり、破損して漏水しやすいです。だから大地震の時は排水してはいけません。
その状況下で、お風呂の残り湯を何に使うのかという話になりますが、トイレも流せないし、手も洗えないし、夏は雑菌も増えて不衛生です。残り湯を溜めておくメリットはありません。
その代わり、水が使えない時のために、除菌シートや液体歯みがきなど用意しておきましょう。でも排水管が破損するような大規模災害以外の断水では生活用水として使えるので、日頃から溜める習慣があれば、浴槽にフタをして使い道を考えておきましょう。
Q4.災害時、断水になっていなければすぐに飲料用の水を溜めるべき?
A.飲み水はなるべくたくさん溜めておきましょう。
発災し、家から避難しなくても身が安全ということなら、水道水が出ている間は飲み水確保のために、できる限り溜めておきたいですね。断水する前にやかんや鍋、ペットボトル、ウォータータンクなどに溜めましょう。浄水器を通していない水道水は常温で3日間は飲料水として使えます。
大地震ではNGですが、浴槽に水道水を溜めれば不足しがちな生活用水として使えます。飲料水にはできませんが、残り湯よりも衛生的です。発災直後もしばらくは水が出ていたという話もありますので、素早い行動がその後の被災生活を、快適に過ごせるかどうかに影響してきます。
Q5.雨水を飲料水にできる浄水器など買っておいたほうがいい?
A.高性能の携帯浄水ボトルは心強い味方です。
災害時で水が飲めない時に川の水や雨水、泥水を飲めるレベルにしてくれる浄水ボトルがあると助かります。
わが家ではセイシェルの携帯浄水ボトル(下写真)を使っていますが、除去や減少可能な有害物質が150種類、放射性物質も除去する高性能で、家族全員分用意しています。
川の水を入れて飲んでみましたが、ろ過にも時間がかからずすぐ飲めます。もちろん、体調変化もありませんでした。そのままだと不安なら煮沸して飲めば安心です。
浄水器はフィルターの機能で決まります。川の水や雨水などに入っている有害物質をどの程度除去してくれるか、フィルターの性能で選びましょう。
『クロワッサン』1100号より