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「家族介護では楽しみを見つけて」(石川みずえさん「介護の距離感」2)【助け合って。介護のある日常】

撮影・村上未知 構成&文・殿井悠子

「10人いれば正解は10通り。家族介護では楽しみを見つけて。」石川みずえさん

石川みずえ(いしかわ・みずえ)さん●日本医科大学医学部卒業。医学博士。産婦人科医を経て、2000年に老人医療の道へ。山手線環内で初の老人保健施設を建てた 龍岡会で、施設長と大森医院の院長を務める。現在59歳。今年5月に要介護4の父親が亡くなり、現在要介護2の母親を"中距離介護"中。母親は車で1時間の場所で一人暮らし。最近認知症状が見られるようになった。
石川みずえ(いしかわ・みずえ)さん●日本医科大学医学部卒業。医学博士。産婦人科医を経て、2000年に老人医療の道へ。山手線環内で初の老人保健施設を建てた 龍岡会で、施設長と大森医院の院長を務める。現在59歳。今年5月に要介護4の父親が亡くなり、現在要介護2の母親を"中距離介護"中。母親は車で1時間の場所で一人暮らし。最近認知症状が見られるようになった。

石川みずえさんは、文京区湯島の町医者。老人保健施設(以下、老健)を運営する「龍岡会」の施設長でもある。

老健とは、病院で治療をした後、体の状態や家庭の事情などで、すぐに自宅で暮らすことが困難な人が一時的に入所し、リハビリをしながら回復を目指す公的施設だ。

「例えば、大きな病気をして病院で治療をした後、龍岡でリハビリに励み、ある程度元気になって自宅に戻られてからは、デイサービスを使って引き続き龍岡に通っていただく。そんなふうに在宅ケアの要となる施設が老健です」

石川さんが医師として大事にしているのは、介護の世界はケアが中心だということ。

「高齢になると、その人にとっての積極的な治療は何か、という判断はむずかしい。確実に回復することが見込める治療だったらやったほうがいいけれど、脳梗塞で機能的に食べられなくなるとか、認知症になって食べることを認識できなくなったりすると、大きな病院に入っても特別な医療ができるわけではありません」

そういう人たちに対して、薬ではカバーできないサポートをするのがケアになる。

「ケアスタッフが安心して働けるように、専門的な知識や技術で背中を押すのが私たち医師の役割です」

訪問医療も行う石川さんは、寝たきり、一人で通院ができない、認知症で外出を嫌がるといった人たちを対象に、10人いれば10通りの介護や看取りを診てきた。

「いろいろな選択があっていい。むずかしいのは、こちらが在宅介護の限界だと思っても、介護される本人が納得するとは限らないこと。自分のことだから本人が決めるのが一番だけど、実際は現実以上に、自分はまだできると思っている人が圧倒的に多いと思います」

「家族介護では楽しみを見つけて」(石川みずえさん「介護の距離感」2)【助け合って。介護のある日常】

現在、一人暮らしの母親が初期の認知症になり、週2回ほど実家に通っている石川さん。

「医師としても、娘としても、私にできることしかできない。だから、遠くにいる弟に対して“自分ばかり……”と恨むほど無理はしない」のがポリシーだ。

「家族介護は仕事ではないので、家族だからこその楽しみがあると思います。歯の磨き残しをやってあげて“スッキリした!”と笑う親の顔を見てうれしくなるとか、介護をしつつソファでごろごろするとか。そう思えるぐらいの介護が、心も体もちょうどいいんじゃないでしょうか」

普段は、老健に隣接する診療所にいる石川さん。入所者の顔色チェックに回ることも。
普段は、老健に隣接する診療所にいる石川さん。入所者の顔色チェックに回ることも。

『クロワッサン』1102号より

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