胆汁酸ダイエットでやせる方法
撮影/青木和義 編集、文/韮澤恵理 イラストレーション/ノグチユミコ
胆汁酸ダイエットとは
おすすめの5つの食材をしっかり食べて新鮮な胆汁酸を増やし、脂肪細胞を直接刺激して燃える体を作る胆汁酸ダイエットは、慶應義塾大学政策・メディア研究科 教授の渡辺光博さんが発案したメソッド。
「胆汁は、肝臓で作られて、胆たん嚢のうに蓄えられ、人が食事をすると、消化を助けるために分泌される消化液です。とくに脂質を乳化して小腸から吸収しやすくするのが胆汁の役割。その主成分が胆汁酸なのです」(渡辺さん)
胆汁酸ダイエットを成功に導く5つの食材
【杜仲茶】
アスペルロシドの働きで再吸収を抑え新しい胆汁酸を作る(3gの茶葉を煮出して1日1リットル)
【長粒米(インディカ米)】
難消化な高アミロースで食物繊維のように働く(1週間に2回、1回150g)
【もち麦】
β-グルカンが腸を掃除、血糖値も上げにくい優等生(1週間に3〜5日、ごはんなら150g、フレークなら50g)
【納豆】
粘りは食物繊維フルクタン。大豆は消化のいいたんぱく質(毎日に1〜2パック)
【海苔】
良質な食物繊維が腸を掃除。ポルフィランが胆汁の劣化防止(毎日全型2枚)
胆汁酸ダイエットでやせる方法 (1)
燃やす細胞を刺激してエネルギーを使う。
脂肪細胞
刺激を受けず、しっかり燃えないので脂肪を溜め込む。
↓
脂肪細胞
胆汁酸から信号を受け取り、ぐんぐん脂肪が燃える。
新しい胆汁酸を作り、血液中の胆汁酸を増やす。
新しい胆汁酸をどんどん作るために渡辺さんは、杜仲茶をたっぷり飲むことをすすめています。
「杜仲茶に豊富に含まれるアスペルロシドという成分には、胆汁酸の分泌を促して血液中の胆汁酸の量を増やし、脂肪を燃えやすくする効果があることが実験でもわかっています」
同時に、腸で胆汁酸が再吸収されるのを抑えるため、二次利用される量が減り、その不足分を血液中のコレステロールから作るので、新鮮な胆汁酸が増えます。
「適正に煮出した杜仲茶を毎日1L、2カ月摂り続ける実験を行ったところ、内臓脂肪面積が55.4平方センチ減ったという研究成果もあります。確実に基礎代謝が上がっているわけです」
渡辺さんによれば、胆汁酸ダイエットを体験した人は、ほとんどの場合お腹周りから効果を感じるそうです。
「人は年齢とともに基礎代謝量が落ちますから、若いときと同じように食べていれば『中年太り』になるのは当然。脂肪の燃焼をサポートすることが大事なんです」
杜仲茶を飲み始めたら、体脂肪率を測ってみてください。ちなみに15歳以上の女性の場合、20〜29%が正常値。細く見えても体脂肪が30%以上、お腹ポッコリの人は早めに対策したいものです。
飲むべきタイミングは食事の途中と前後。
杜仲茶はこまめに飲めばいいのですが、最も効果を得やすいのは食前、食事中、食後です。
「食事をすると胆汁が分泌され、消化を助けたあと、腸で吸収されますが、食事中に杜仲茶を飲むと胆汁酸の分泌量が増えるのです」
食物繊維やレジスタントスターチで腸内の善玉菌を元気にすると、古い胆汁酸の再利用がさらに抑えられ、肝臓は新しい質のいい胆汁酸を作ります。ちなみに胆汁酸の原料はコレステロールなので、新しい胆汁酸を作れば、血中コレステロール値が下がるというおまけ効果も。
胆汁の分泌されていない寝起きや空腹時に飲んでも脂肪燃焼効果は低めです。
「杜仲茶にはゲニポシド酸という血管を拡張して血圧を下げる成分なども豊富に含まれるので、水替わりに飲むのはいいことです」
効果を得るためには、しっかり煮出すのが一番のポイント。沸騰後10分ほど煮出しましょう。
お茶として飲むだけでなく、料理に使うのもおすすめです。
成分の損失が少ない製法で作られた信頼できるものを選ぶのも重要だそう。
毎日杜仲茶を飲むと……
杜仲茶を飲み続けて新鮮な胆汁酸を増やすと基礎代謝が上がる。その代謝アップ効果はウォーキングに換算すると以下の結果に。
(杜仲茶量)500ml → (ウォーキング) 30分
(杜仲茶量)1L → (ウォーキング) 45分
(杜仲茶量)1.5L → (ウォーキング) 60分
胆汁酸ダイエットでやせる方法 (2)
古い胆汁酸をさっさと捨てる場に整える。
古い胆汁酸を駆逐するよい腸内環境を作る。
新しい胆汁酸を作るには、古い胆汁酸を追い出すことが必須です。それには食事で排出を促す方法が効果的だそうです。
「ひとつは食物繊維。胆汁酸を包み込む働きのある水溶性食物繊維と、押し出して胆汁酸の腸内滞在時間を短くする不溶性食物繊維。この両方が胆汁酸の再吸収を抑えてくれます」
胆汁酸の排出を促すという点からは、どんな食材がおすすめなのでしょうか?
「海藻やきのこには水溶性食物繊維、根菜類に不溶性食物繊維が豊富なことは知られています。β(ベータ)-グルカンが豊富なもち麦は以前からすすめていますが、最近注目しているのは、レジスタントスターチやレジスタントプロテインの効果です」
レジスタントスターチは、難消化性でんぷんと呼ばれ、もともと消化されにくいでんぷんや、冷めたご飯やいも類といった温かいときには糖質たっぷりなのに冷めると消化されにくくなり、食物繊維のような働きをする食材にも含まれます。長粒米も、日本の米(ジャポニカ米)に比べて消化されにくいのでおすすめです。
レジスタントプロテインも同様。消化されにくいたんぱく質で、一度加熱したあと、冷ました食材に多く、身近なものでは納豆に豊富だといいます。食材は温度によって吸収のされ方が変わるのです。
「善玉菌を増やして腸内環境を改善することも、便通を正常にし、胆汁酸のすみやかな排出に役立ちます」
胆汁酸を劣化させてしまう悪玉菌を増やさないことも大切です。海苔には直接悪玉菌を減らす効果があることで注目されています。
新しい胆汁酸を増やすポイントは、胆汁酸を再吸収させないこと、質を落とす悪玉菌を増やさないことの2つです。
再吸収させない
胆汁酸を包み込み、 再吸収を阻害してさっさと排出すれば新しい胆汁酸が誕生。
◎ 主食の一工夫がカギ。
胆汁酸ダイエット成功のカギは主食をちょっと変えること。おすすめは長粒米ともち麦です。
長粒米はジャポニカ米に比べてレジスタントスターチが豊富で、熱々でなくてもおいしいので、カレーやチャーハンにアレンジを。
もち麦は食物繊維の王様。日々の主食をこうした食材に変えるだけで胆汁酸が入れ替わります。最近では長粒米の米粉やパン、もち麦フレークなど商品の幅も広がっています。
◎ 毎日納豆習慣を。
健康効果の多い納豆ですが、着目したいのがフルクタンという食物繊維。納豆のネバネバ成分で、粘らせても粘らせなくても含有量は同じ。
朝食の定番ですが、夕食に食べるのがおすすめ。納豆は蒸した大豆が原料で、納豆菌によって分解されるとアミノ酸が増え、消化もよい良質なたんぱく源になります。
加熱した大豆を冷やして食べるため、レジスタントプロテインとして腸活にも役立ちます。
悪玉菌を増やさない
腸内細菌のバランスを保つことで、 悪玉菌を減らし、有毒物質を早く出す。
◎ 胆汁酸の劣化を防ぐ。
胆汁酸の再吸収を阻止するためには、腸内環境を整えることが重要。海苔の食物繊維ポルフィランには、肥満を抑制する働きがあることがわかっていて、さらに胆汁酸の劣化を早めるクロストリジウム菌という悪玉菌を減らすことで知られています。
おすすめなのは一般的な焼き海苔です。味付け海苔や韓国海苔を全型2枚分食べると、塩分の摂りすぎになるので注意してください。
◎ 野菜で食物繊維も。
腸内細菌のエサになりやすい水溶性食物繊維が注目されていますが、腸の蠕動(ぜんどう)運動を促し、滞留便を押し出す不溶性食物繊維の存在も欠かせません。
水に溶けない繊維で、ごぼうやにんじん、れんこんなど根菜類の繊維質がそれ。さつまいも、雑穀、大豆などにも豊富です。こんにゃくは生の状態では水溶性食物繊維ですが、塊になった製品は不溶性食物繊維なので、腸の掃除に役立ちます。
『Dr.クロワッサン おなかが凹む胆汁酸ダイエット。』(2021年4月13日発売)より。