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運動に取り組む前に。その腰痛、病気かも?

大きな歩幅の確保は腰痛予防につながる、と整形外科医の平尾雄二郎さん。目標は65.1cm。運動やストレッチで歩幅は広げられますが、始める前にチェックリストで病気の可能性も確認しましょう。

撮影/角戸菜摘 文/石飛カノ

運動に取り組む前に。その腰痛、病気か否かをチェック!

【 ひとつでも当てはまったら整形外科へ! 】
以下の当てはまる症状にチェックをつけてください。

□ 脚に痛みがある
□ 脚にしびれがある
□ 痛みが3か月以上続いている
□ 痛みが徐々に増している
□ 安静にしていても痛みがある
□ 脚に力が入らない
□ 脚が上がりにくい
□ 脚尿や便が出にくい

では、今日から早速ストレッチに励んで65.1mc以上の大きな歩幅でウォーキング! でも、ちょっと待って。スタートする前にひとつ確認しておくべきことが。

非特異的腰痛の人は速やかに運動に取り組んでほしいけれど、万が一、特異的腰痛という可能性はゼロではありません。

上に示したような症状にひとつでも思い当たるものがあれば、整形外科へ。平尾さんからひとつひとつの症状について解説していただこう。

「脚に痛みやしびれがあるという場合、坐骨神経痛が考えられます。腰椎や仙椎から出ている神経は骨盤の中で集まって坐骨神経と呼ばれる太い神経となり、脚に向かいます。腰椎や仙椎に神経を刺激する病変があると、腰を動かすとお尻や太ももにピリピリとしびれを伴う痛みを感じます。この症状は腰椎椎間板ヘルニア、腰椎すべり症、脊柱管狭窄(きょうさく)症、どれにも当てはまります」

動いているときにお尻や太ももの裏に痛みやしびれを感じるという場合は、比較的軽症。しかるべき治療を受ければ回復も早い。ところが、じっとしていても足裏にしびれを感じる場合は、ちょっと問題。

「足の裏に常にしびれがあるというのは、脊柱管狭窄症がかなり進行した症状です。立っていても座っていても、常に足の裏に紙が1枚敷いてあるような感覚です。普通は歩くと痛みやしびれが強くなりますが、歩いていなくてもしびれを感じたら、症状がかなり進行していると考えてください」

しばらくすると痛みがだんだん和らいできた。2〜3か月で痛みが消えた。時間の経過とともに症状が軽くなってきたのであれば、それは非特異的腰痛。

「歩いていなくてもしびれを感じたら、 かなり重篤です。」
「歩いていなくてもしびれを感じたら、 かなり重篤です。」

痛みやしびれが長く続き、増していくのが特異的腰痛の特徴。

注意したいのはいつまで経っても痛みが続く、それどころか痛みが徐々に増していくという症状。

「椎間板ヘルニアでも、2か月くらい経ってヘルニアの患部がなくなることがあります。症状が長引くということは、それ以上に治りにくい病変があるかもしれません。整骨院やマッサージに2〜3か月通っても治らないときは整形外科へ」

ちなみに、ぎっくり腰は1〜2週間で快方に向かうのが一般的。なので、こちらは非特異的腰痛。

基本的に何かの動きをしたときに痛みが生じるのが、整形外科的な病気による腰痛。でも、安静にしていても腰が痛むというときは、より深刻な病気が隠れていることも。

「がんが背骨に転移したときに特徴的に見られる症状が腰の安静時痛。肺がんや乳がんなどが血液で運ばれて骨に転移します。腰痛でがんが見つかった場合は、ステージが進行しているケースもあります。また、細菌に感染して背骨が炎症を起こして腰痛が生じることも。こちらは化膿(かのう)性脊椎炎や椎間板炎といって、抗生剤を使った治療を施します」

尿や便の排泄異常が腰の病気のサインかも?

脚に力が入らなかったり、足首が上がらないという症状は、神経が圧迫されて麻痺している可能性が高いという。しびれよりも、こちらの方が症状が重いのだとか。

「椎間板ヘルニアなどによる神経の圧迫による麻痺で一番多いのは、足首を上げ下げできないという症状です。つま先が地面に引っかかって転びやすくなります」

さらに意外なことに、尿や便が出にくくなることも腰の病気のサインである可能性が。

「背骨に沿って走っている脊柱管という神経の通り道には、膀胱(ぼうこう)や直腸の機能をつかさどる神経が通っています。椎間板ヘルニアや脊柱管狭窄症でそこが圧迫されると、膀胱直腸障害といって尿や便が出にくくなることがあります。初期症状としては頻尿になることもあります」

いずれも、早めに手術をしないと後遺症を残してしまう可能性が高いので、一刻も早く受診を。

「がんが転移したり細菌に感染しても腰痛の症状が出ます。」
「がんが転移したり細菌に感染しても腰痛の症状が出ます。」
  • 平尾雄二郎

    監修

    平尾雄二郎 さん (ひらお・ゆうじろう)

    脊椎外科医

    都立広尾病院整形外科医長。脊椎外科の専門医として日々、手術による腰痛患者の治療のほか、セミナーなどで腰痛改善法の普及に努める。

『Dr.クロワッサン 歩幅65.1cmで、腰痛しらず。』(2019年3月5日発行)より。

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