脳神経と薬学の専門家に聞いた「更年期」の漢方薬選び。現代は不調の原因も多々。
イラストレーション・宇和島太郎 文・馬場さおり
【更年期】ほてりや動悸、不安感、のぼせなどのさまざまな更年期に起こる不調に。
<定番>家庭を守ることが女性の役目だった時代の漢方薬選び。
女性は家庭を守るのが仕事、と言われていた一昔前。
主婦や商家の女将、農業の手伝いなど、昔の女性の生活は家庭や身近なところを守ることが中心で、必然的に女性ホルモンが優位になりやすく、女性ホルモンが減少しやすい更年期もホルモンケアではなく血液のケアを行う漢方薬『当帰芍薬散(とうきしゃくやくさん)』と『桂枝茯苓丸(けいしぶくりょうがん)』が重宝されました。
血液の量を増やす作用が期待できる『当帰芍薬散』は、現代でもスマホなどをあまり使用せず活動的でない貧血気味の女性にとってはおすすめの漢方薬です。
また、『桂枝茯苓丸』は血液の滞りの改善に働きかけてくれ、家事や育児中心の生活を精力的にこなす体力が充実した女性にも適しています。
<でも、こんな場合は>「女性の社会進出が進んだ現代では、不調の原因も様々。」
スマホやネットを日常的に使用している現代の女性は、昔と比べて脳と神経を使う機会が圧倒的に増え、日常的に交感神経が興奮している状態です。
その結果、自律神経が乱れやすく、女性ホルモンが減って男性ホルモン優位になりがちに。さらに更年期による女性ホルモンの減少も加わり、ほてりや動悸(どうき)などの不調が現れます。
そのためこのタイプのケアにおいては脳と神経の疲労回復とともに、ホルモンバランスの調整も不可欠な要素。この両方をかなえるのが『加味逍遙散』であり、血液増量の作用や血液の滞りを改善する作用も期待できる優れた漢方薬です。
ただし漢方頼りになることなく、音楽や香りなどを活用してリラックスする習慣も取り入れるように心がけましょう。
<更年期には>購入できる漢方薬
加味逍遙散エキス錠/DHC
女性のホルモンの変動にともなって現れる、精神不安やイライラなどの精神神経症状をはじめとし、のぼせや動悸、冷え、肩こり、疲労感といった更年期症状特有のさまざまな症状に効く漢方薬です。
クラシエ当帰芍薬散錠/ クラシエ薬品
冷え症で貧血の傾向があり疲労しやすい人に適した漢方薬です。当帰芍薬散錠は水分代謝を高め、余分な水分を取り除きながら、血行を促し、足腰の冷え性を改善させて、顔や手足のむくみや冷えに働きかけます。
ツムラ漢方桂枝茯苓丸料エキス顆粒A/ツムラ
下腹部痛や肩こり、頭重、めまい、のぼせて足冷えなどの不調を抱えている、比較的体力がある人向け。月経不順や月経痛、更年期障害以外にも、血の道症や肩こり、めまいなどの不調のケアに働く漢方薬です。
『Dr.クロワッサン 不調が消える、ふだん漢方』(2020年1月28日発行)より。