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自分の顔や体型は、もう一人の客観的な自分がいないとわかりません――K・Iさん(高島屋商品研究室)

1977年創刊、40年以上の歴史がある雑誌『クロワッサン』のバックナンバーから、いまも心に響く「くらしの名言」をお届けする連載。今回は、プロの言葉を頼りに、ファッションのマンネリから抜け出すヒントを探ります。

文・澁川祐子

1978年10月25日号「今まで着られなかった服を着る」より
1978年10月25日号「今まで着られなかった服を着る」より

自分の顔や体型は、もう一人の客観的な自分がいないとわかりません――K・Iさん(高島屋商品研究室)

結婚してからは、オーソドックスな服ばかりを着るようになったという人。自分が心地いいと思う服を選んでいたら、いつのまにか冒険できなくなったという人ーー。

いつも同じような服に手を出してしまうという悩みを抱えた読者が登場し、プロのコーディネートによって、ふだんとは違うファッションに挑戦する特集。ファッション自体は、時代性があるのでそのまま参考にはできないですが、プロの助言には頷けるポイントがいくつかありました。

なかでも響いたのが、今回の名言。くすんだ色は顔がボケて見えて、自分には似合わないと諦めていた人に対するアドバイスです。

<気おくれするんだったら、着ないほうがいいです>と前置きしたあとに<ただし>と言い、名言が続きます。合わない服を無理に着る必要はないけれど、本人が「似合わない」と思い込んでいるだけ、というケースもある。だから、自分を他人として見る目がないと、本当に似合わないかどうかはわからないということです。

そしてくだんの女性は、カーキ色のブレザーやベストの組み合わせにチャレンジ。撮影スタッフは全員「似合うね!」と大絶賛するものの、夫はピンとこない様子が誌面からありありと伝わってきます。

夫はもはや他人の目ではないのか、とツッコミを入れそうになったところで、はたと気づきました。それは、夫でさえ妻の装いに見慣れてしまっているということ。だとしたら、自分で自分を「客観視する」のはなおさらむずかしいことでしょう。ときには他人、それもちょっと距離のある人の意見に素直に耳を傾けてみることも、ファッションのマンネリを打開する手なのかもしれません。

※肩書きは雑誌掲載時のものです。

澁川祐子(しぶかわゆうこ)●食や工芸を中心に執筆、編集。著書に『オムライスの秘密 メロンパンの謎』(新潮文庫)、編著に『スリップウェア』(誠文堂新光社)など。

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