感染症の専門家に聞く、インフルエンザの予防と対策。
イラストレーション・木下綾乃 文・黒澤 彩
備えあれば憂いなし! 大切なのは予防と対策。
流行前後、積極的に気をつけておくと、よいこととは?
インフルエンザは、なんといっても予防が肝心。本当に効果のある方法を知っておこう。
「まずは、正しい手洗い。これはかなり有効です。手洗いは病原菌を選ばないので、インフルエンザ以外の感染症も防ぐことができる万能の予防法です」
さまざまな場所に触れた手が感染の原因になることは多い。乾燥に強いインフルエンザウイルスは一度付いた場所に長く居続けることができる。流行しているときは、人が触るところ=ウイルスがあるところと見なして、帰宅後は真っ先に手を洗おう。丁寧に洗うのはもちろん、こまめに洗うのもポイント。アルコール消毒も有効だ。
一方、手洗いとセットのようにいわれがちな「うがい」には、それほどの効果が見込めないのだという。
「実は、うがいの効果は手洗いと比べると限定的です。ウイルスは鼻の粘膜や喉の奥の上のほうに付いて、早ければ数分のうちに感染が成立します。うがいをしても届かないところで感染することと、感染するタイミングでうがいするのは不可能なことから、感染を防ぐのは難しいと考えられるのです」
手洗い・うがいは基本と信じてきた人にはショックな真実。とはいえ、実際のところ、うがいをしない人よりしている人のほうが罹りにくいのでは?
「うがいを習慣にしている人は、きっと手洗いもきちんとしていて、健康意識の高い人ではないでしょうか。手洗いをせずにうがいだけをする人なんていませんよね。手洗いのオプションとしてうがいをするのはいいことです」
口のなかにもともといる雑菌には、悪い菌をブロックする役割もあるので、うがいの際に口腔内を殺菌しすぎないように気をつけたい。
インフルエンザの季節に欠かせないものといえばマスク。その重要度は、感染している人と予防したい人とで異なるという。
「すでに感染している人がマスクをすることは、とても有効です。くしゃみや咳が出るときにマスクで遮断すれば、飛沫が拡散するのをある程度防げるからです。インフルエンザかもしれないと思ったら、必ずマスクを着用しましょう。人がいるほうに向けて咳をしない『咳エチケット』も忘れずに」
一方、予防のためのマスクの役割は少し違ってくる。
「ウイルスを含む飛沫は空気中で細かくなるので、マスクで完全に防ぐことはできません。でも、マスクをしていることで、ウイルスの付いた手で鼻や口を触らなくなるという意味では効果が」
感染予防のためには、ふだんからあまり顔を触らないように心がけたいが、無意識のうちにそうしてしまう人にはマスクがおすすめ。
乾燥対策として加湿をするのも悪くはないが、インフルエンザを予防する直接的な方法とはいえないそう。
「うがいにしろ加湿にしろ、やっていけないわけではないので、有効度の高い対策をしっかりとした上で好みのものを取り入れるのがいいでしょう」
こまめな手洗いと、次の項目で詳しく説明するワクチンが、インフルエンザ対策のスタンダードといえそう。
日頃から心がけたいこと
◎手洗い
◎ワクチン
◯マスク
◯人混みを避ける
◯アルコール除菌
△加湿
△うがい
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