作家の楊逸さんが海外で見つけた、その土地ならではのおやつ。
撮影・清水朝子
まとまった休みが取れたら海外へ行き、その土地の食を楽しむ。
作家の楊逸さんは旅好きで食いしん坊。著書『蚕食鯨呑(さんしょくげいどん)』では、世界各地の食べ物に関しての考察もさることながら、故郷ハルビンでの思い出の味や旅先で出合った食べ物を詳細に描く。ニンジンやキュウリがおやつの定番だったハルビンで過ごした幼少期。長じてからは、中国はもとよりアメリカ、フランス、オーストラリアにギリシャと世界各国を訪ね、その地の食を楽しむ様子で、どれだけ食に興味があるかが読み取れる。
ココナッツ味のお菓子やプリンが大好きで、海南島でついに出合った椰子の実ジュース。なのに生ぬるくて思い描いていた味がせず、熱が一気に覚めた様はなんとも微笑ましい。今も、「少なくとも2〜3週間の休みが調整できたら、海外に行きますね。最近はヨーロッパが好き」。
今夏もスウェーデンに3週間旅してきたばかり。そこで見つけたのがたらこペースト「Kalles Kaviar(カレス・キャビア)」と海老チーズペースト「Räkost(ラコスト)」のチューブ。
「海外に行ってホテルにチェックインしたら、必ずすぐに現地のスーパーに行きます。その土地ならではの文化が感じられるのが好きなんです」
2つのペーストもスーパーで惹かれ、一番大きなサイズを買ったら、「おいしいの! いろんなものにのせておやつで食べています」。
キュウリはどちらのペーストも合うし、お煎餅には海老チーズ、クラッカーには両方をのせて食べるのが正解、とさまざまなもので試している。「一番大きなサイズを買ってよかった」というほどお気に入りだ。
海外旅行での食の醍醐味は、こうした偶然見つけた味にこそある。目的地の下調べは一切しない。
「スペインのバレンシアに行ったときは、偶然火祭りが開催されていて。屋台で食べたブニュエロが、中国の揚げパン・にそっくり。日本で無性に食べたくなって探しても、冷たくて、おいしい油条がなかったのに、まさかスペインで出合えるとは。感動でした」
勘を働かせ、鼻を利かせて探しあてたその土地ならではの味と、それに伴う文化に何より魅力を感じるという。
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