【岩井志麻子×滝本誠 対談】異世界をのぞく、偏愛的読書の愉悦。【後編】
作家の岩井志麻子さんと映画評論家・滝本誠さんによる読書談議。今回は昔に読んで衝撃を受けた作品について話が広がりました。
撮影・三東サイ
滝本 楳図かずおさんの作品は絵がとてもきれいですね。
岩井 当時ホラー漫画といえば楳図かずお、つのだじろう、古賀新一の3人が人気だったんですが、女子は圧倒的に楳図ファンが多かった。怖いものはものすごく怖く描かれているのに主人公の女の子がかわいくて美しい。それと、つのだじろうさんとの比較でいうと、つのださんの作品は数字とか統計とか「専門家はこう言っている」とかの解説が入っていたりするのに対して、楳図さんの漫画は歩いてたらいきなり内臓が降ってくるみたいなとんでもなさ、得体の知れない怖さがあって。女の子は理屈じゃないということを、楳図さんはよく知っていたんだなと思う。
滝本 岩井さんのテーマが一貫して「恐怖」なら、僕のテーマは「異端」「変態」かな(笑)。好きな本が2人とも「怖い、残酷、気持ち悪い」などと人から敬遠されることも多いジャンルですよね。
岩井 子どもは読んじゃだめ、というような本ばかり読んでたから私にとって読書はうしろめたいものという認識でした。だから楽しいんだけど(笑)。これからも「怖いもの」を追求します。
『クロワッサン』955号より
●岩井志麻子 作家/『ぼっけえ、きょうてえ』で1999年日本ホラー小説大賞、2000年山本周五郎賞受賞。コメンテーターもこなす。待望の新作『嘘と人形』(太田出版)が刊行されたばかり。
●滝本誠 映画評論家/京都府出身。初の評論集『映画の乳首、絵画の腓』が幻戯書房より近日復刊。ジム・トンプスン『天国の南』(文遊社)、ジェニファー・リンチ『ツイン・ピークス ローラの日記』(角川文庫)の解説も。
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