ローブひとつ、額ひとつ、花の一本に、あなたのセンスの光ってる暮しってすてきだと思う――犬養智子(エッセイスト)
文・澁川祐子
ローブひとつ、額ひとつ、花の一本に、あなたのセンスの光ってる暮しってすてきだと思う――犬養智子(エッセイスト)
1978年7月25日号の巻頭では、フランス『ELLE』誌の暮らしのアイデア集を掲載。導入部に、エッセイストの犬養智子さんが短文を寄せています。そのなかの一節が、今回の名言です。
<お金をかければ、りっぱな住いに、すごいおしゃれが手にはいるのは、当りまえ>と犬養さん。<小さなポケットから出るお金で、したいことをしてカッコよく生きるには、アタマを使って工夫しなくちゃ>と続けます。身近にあるものをアレンジして、どれだけ楽しめるかが大事だということです。
紹介されているアイデアは、料理からファッション、インテリアまでさまざま。折り紙細工を応用した小物のラッピング方法や、スカーフを使った髪のまとめかたといった簡単なものから、DIYでつくる折り畳み椅子のように難易度が高めのものまでバラエティに富んでいます。なかには、使い古したシーツをシャツに仕立てる、テーブルクロスを大きなポケットのついたピクニック用エプロンにする、なんて変わったアイデアも。
当時は、まだ100円ショップのない時代(固定店舗の登場は1980年代)。いまや工夫せずともなんでも安く買えるようになりましたが、それだけに一層<ローブひとつ、額ひとつ、花の一本>に自分なりに手をかけることが、暮らしのアクセントになることは間違いないでしょう。実際に取り入れるかは別として、自由な発想力にあふれた誌面は、いま眺めても楽しいものでした。
※肩書きは雑誌掲載時のものです。
澁川祐子(しぶかわゆうこ)●食や工芸を中心に執筆、編集。著書に『オムライスの秘密 メロンパンの謎』(新潮文庫)、編著に『スリップウェア』(誠文堂新光社)など。