【紫原明子のお悩み相談】彼とのセックスレスで悩んでいます。
<お悩み>
同棲中の彼とセックスレスで悩んでいます。
本当に仲が良く、スキンシップもキスも毎日するのですが、セックスレス気味です。月1回くらいです。それも、毎回わたしから誘っています。
わたしと彼はお互いバツイチで、彼は前の奥さんともセックスレスが原因で別れたそうです。彼がいうに、セックスがなくてもコミュニケーションがとれていれば満足するタイプなのだとか。
このままだと本当にセックスがなくなってしまいそうで怖いです。子供もほしいです。子供のためのセックスはやる気だそう。相性がめちゃくちゃ良いので別れるとかは考えられません。浮気もしたくありません。
わたしはどうしたらいいのでしょう? わたしが我慢すべきなのか、彼が無理してセックスすべきなのか。悩ましいです。わたしは人並みにセックスが好きです。(相談者:たまご/女性。現在、求職中の33歳女性です。30歳の彼氏と都内で同棲しています。付き合って2年くらい。)
紫原明子さんの回答
たまごさん、こんにちは。セックスレス、本当に悩ましい問題ですよね。
よくあるのは、カップルの積極的な方の人がものすごく深刻に悩んでいても、消極的な方の人がそれに気付かず(もしくは気付かないふりをして)やり過ごしているうちに、積極的な方の人が別に恋人を作ったり、しびれを切らして別れを切り出したりするケースです。しかしたまごさんの彼の場合、すでに一度セックスレスが原因で離婚を経験されているとのこと。レスを軽んじてるからやらないというわけでもないんですね。さらに、“無理にしてもらうことはできる”“子作りのセックスはする(彼談)”ということから、フィジカルの問題でもなさそう。となるとやはり残念ながら今、彼にとってのセックスは必要もないのにやりたいと思えるほど楽しいものではなく、コミュニケーションとしてのセックスの価値も会話より低い、ということなんですねえ。
そしたらもういっそのことたまごさんが考え方を変えて、自分がやりたくなったときに彼をいかに誘惑できるか、いかにうまく乗せることができるかを楽しむ、ということにしたらどうでしょう。彼が乗ってきたら誘惑成功、断られたら失敗、次回に向けて作戦を練り直す、と。好きな人を誘惑したり、求めたりするのって、必ずしも男性だけの仕事じゃないし、女性である自分の価値がいかに求められるかで決まるなんていう時代でも最早ないですからね。
そもそも、セックスはコミュニケーションとよく言うけれど、果たして世の中のどれほどの人が、コミュニケーションと呼ぶに値するセックスを営んでいるのだろうかと思うんです。男性が勃起し、女性が濡れることによって「私はあなたに欲情している」「私はあなたに欲情されている」を確認し合う程度の情報しかやり取り出来ていないとしたら、そのセックスコミュニケーションは、あまりリッチとは言えはないような気がしませんか。何しろ、そこに人間一人ひとりの個性なんて関係なくて、動物的なニーズを確認し合うだけですからね。
セックスってこの時代にめずらしく、わざわざ社会の目を避けて、二人だけで営むものじゃないですか。SNSに上げたり、いいねを期待したりもせず、一切プライベートでやることじゃないですか。だからこそそこには本当なら、もっともっとたくさんの激レアな個人情報が乗って良いはずなんです。“求められている”“応じられている”を確認するばかりじゃなく、隠しようにも隠しきれない、より具体的で、よりいびつな、極めて恥ずかしい個人の欲望を、お互いがここぞとばかりに交換する。それによって、「私とはこういう人間です」と、そりゃもう言葉なんかじゃ伝えきれない解像度で伝えられたりするはずなんですよ。
ところが、漫画とかAVとかエロ雑誌で見た手順を疑いもなく儀式のように踏襲するセックスでは、きっとそんな風に豊かなコミュニケーションを支援するツールにはなり得ないと思うんです。時間と手間をかけて、想像力を膨らませて、ときに一歩踏み出す勇気をもって、自分たちだけに最適化された、オリジナルの方法を探るってことが必要だと思うんです。
だって考えてみれば、持って生まれた気質や育った環境で、私達って十人十色です。趣味も好きな食べ物も人それぞれじゃないですか。セックスだって同じだと思うんですよ。もし体質的に性欲が薄いとか、過去の経験からセックスに何かトラウマがあるとかいうわけでなく、ただ漠然と消極的なのであれば、おそらくより自分独自の欲望と、それに合ったやり方を見つけることによって、急にセックスが楽しくなるということは、十分にあると思うんです。
ただし、そこに至るまでには強力な信頼関係が築かれていることが必要不可欠です。本当の欲望って往々にして大人っぽくないもの、子供じみたものなので、笑われたり、引かれたりするかもしれないという不安がある限り、どんなに見せてとせがまれても、簡単には見せられないですよね。また、相手への信頼があったとしても、自分が怖くて認められない場合もあるでしょう。自分の欲望を具体的に自覚した瞬間、それまで知らずに済んでいた途方もない乾きに襲われることになるかもしれないし、知ってしまえば忘れることも出来ず、それまでのように自分が制御できなくなるかもしれません。だから怖い。でも、仮にもそんな恐怖を一緒に乗り越えられるとすれば、そのパートナーというのは他人では替えの利かない唯一無二の存在になり得るだろうし、そんな存在を持つことで、それまでに味わったことのないような温かさが、心の中に満ちてくるのだろうと思うんです。
ですから、たまごさんがムラムラしたときにはぜひ、彼にあの手この手で誘惑を仕掛けて、彼が何か乗り気になる方法はないか、反応を見てみてください。同時進行で、彼が日常において少しでも欲望を垣間見せたら、それが何であれどんどんすくい上げて、褒めるというのもいいかもしれません。
「おなかすいた」「おなかすいたの〜偉いね〜」
「眠い」「眠いの〜偉いね〜」
褒められた彼の方は最初のうち「なんでだよ」と思うことうけあいですが、それでも無視して褒め続けてください。たまごさんの前では欲望をあらわにすると褒められる、という状況を習慣化することによって、彼は次第に褒められるために欲望をあらわにするようになるでしょう。そうやって、彼のあらゆる欲望を少しずつ大事に育て上げることによって、ゆくゆくはぜひ、彼自身も知らない正直な性欲のありかを、見つけ出してみてください。
紫原明子● 1982年、福岡県生まれ。個人ブログが話題になり、数々のウェブ媒体などに寄稿。2人の子と暮らすシングルマザーでもある。Twitter
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