時々、死んだ人々が昨日まで生きていたように懐かしくなる――F・トリュフォー(映画監督)
文・澁川祐子
時々、死んだ人々が昨日まで生きていたように懐かしくなる――F・トリュフォー(映画監督)
創刊から1年経ち、月刊から隔週刊にリニューアルされたクロワッサン。ロゴも現在使われている堀内誠一さんデザインのものに変わり、情報ページがより拡充されました。
今回の名言が掲載されている、海外雑誌の記事を紹介する「外国の雑誌から」もそのひとつ。ファッション誌のみならず、週刊誌やインテリア誌など幅広いジャンルの雑誌から注目のトピックを拾って解説しています。
ヌーベル・バーグを代表する映画監督フランソワ・トリュフォーの名言は、フランスの週刊ジャーナル誌「L’Express」からの引用。46歳になったトリュフォーが、20年にわたる映画生活の思い出や現在の心境を語ったインタビューをもとに構成されています。
新作の『緑色の部屋』で、「死」をテーマに選んだ理由を聞かれ、<46歳にもなると、そろそろ死んでしまった人たちの思い出にとり囲まれるようになる>と返答。続けて語ったのが、今回の名言です。
さらに懐かしく思い出される人のひとりとして、詩人のジャン・コクトーの名を挙げ、<彼のレコードをかけ、そして詩人の朗読を聞いてみる。朝風呂に入りながらね‥‥>と、感傷的な一面をのぞかせています。
当時はパソコンすら普及していなかった時代。ネットを通じて瞬時に世界の情報にアクセスできるいまとは違い、しみじみと実感のこもった巨匠の言葉をリアルタイムで味わえるのは貴重な機会だったに違いない、と小さい記事を読みながら想像しました。
※肩書きは雑誌掲載時のものです。
澁川祐子(しぶかわゆうこ)●食や工芸を中心に執筆、編集。著書に『オムライスの秘密 メロンパンの謎』(新潮文庫)、編著に『スリップウェア』(誠文堂新光社)など。
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