Happy Glassに学ぶ?『Happy Glass』│山口恵以子「アプリ蟻地獄」
イラストレーション・勝田 文
読んで字の如く、グラスをハッピーにするゲームです。
土管から流れる水を受け、グラスが満杯になったら成功。安定が悪くてグラスがひっくり返ったり、障害物があって水を受けられなかったりするのを、補助線をあれこれ引っ張ってクリアする。
最初は簡単にクリアできるが、レベルが上がるに従って難易度が増し、遂には必死で頭をひねっても補助線の引き方が分らなくなる。
こうなるとこっちも意地だ。どんどん熱くなって挑戦を繰り返す。が、そういうときに限って成功が覚束ないのが世の常だ。むしろ、何気なく引っ張った補助線が障害物をクリアして大成功、なんてこともある。
そして気が付けば、ゲームを始めて一時間も経過してるじゃないの!?
何やってんの、私! こんなコトしてる場合じゃないでしょ!
我に返った途端、ふと思った。
このゲーム、単純なようでいて、実は物理の法則に基づいているのではあるまいか? 落下運動。ニュートンのリンゴ。万有引力の法則。
ひえ~ッ! 忌まわしい過去の思い出が一気に蘇る!
数学は細かい計算問題で0点を回避できたが、物理は違った。問題文に設問1・2・3だから、最初の一問を間違えたらお終いで、毎回いとも簡単に0点を取ってしまった。
高校を卒業したときは「これで一生、物理とお別れ」とホッとしたが、こんな所で再会するなんて!
封印した過去に復讐される、サスペンスドラマのような展開でした。
山口恵以子(やまぐち・えいこ)●作家。最新刊『ふたりの花見弁当 食堂のおばちゃん4』(ハルキ文庫)。
『クロワッサン』985号より
広告