パズルゲームで笑う?『ファミリーガイ:こんなパズルゲーム狂ってるぜ!』│山口恵以子「アプリ蟻地獄」
イラストレーション・勝田 文
これはパズルゲームをやって得点を増やしていく形式の、一見ごく普通のアプリなのだが、途中でコントが入るのがちょっと変っている。
実は、ゲームはどうでもよくて、このコントにハマってしまった。
アメリカのとある田舎町を舞台に、住人たちによる夫婦漫才やぼやき漫才が楽しめる。
突然「これこそ俺の夢なんだ」と、バーの設備を搭載した“バートラック”で旅に出ると宣言した亭主に「あんた、メキシコシティのディズニーランドでモノレールの運転したときも、同じこと言ってたじゃない」と呆れる女房。「……。あれ、普通ここでカットアウェイだろ?」「あんた、これは映画じゃなくてスマホゲームよ。カットアウェイは高くて使えないの」ちゃんちゃん。
所謂アメリカンジョークってやつでしょうか。全てこの調子で、そんなに面白いわけじゃないけど、不思議と懐かしい感じがする。
何故なら七十~八十年代に放送された人気の米ドラマ「刑事スタスキー&ハッチ」「白バイ野郎ジョン&パンチ」「チャーリーズ・エンジェル」にも、こんな会話があったから。
あの頃はバブル前夜。日本も私も若かった。明るい未来が待っていると信じて疑わなかったっけ……。
三十数年後、九十一歳の母の介護に追われる行かず後家の小説家になろうとは、夢にも思いませんでしたよ。トホホ。
五十歳以下の方には新鮮な、それ以上の方には郷愁を誘うゆるい笑いのアプリ、お試しになりますか?
山口恵以子(やまぐち・えいこ)●作家。最新刊『ふたりの花見弁当 食堂のおばちゃん4』(ハルキ文庫)。
『クロワッサン』983号より
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