ねこあつめでご満悦?『ねこあつめ』│山口恵以子「アプリ蟻地獄」
イラストレーション・勝田 文
猫好きには堪えられない、可愛い猫たちがてんこ盛りのアプリ。
まずはメニューを開き、最初に付与されたにぼしをお金代わりにグッズを購入、庭先に「せっち」すると、それを目当てに猫がやって来て、「お
礼にぼし」を置き土産に帰って行く。
それを二度、三度と続けてにぼしが増えたら、また新しいグッズを買って「せっち」、新しい猫を招く。
高級なグッズには滅多に現れない「すふぃん」「ながぐつ」「たてじま」などの超レア猫も寄ってくる。
レアじゃない猫たちも、ボールをお腹にラッコ抱きしたり、ビニール袋を頭にかぶったり、とにかくグッズと戯れる猫たちの姿態と表情が可愛くて、大いに癒やされる。
溜まったにぼしで高級グッズを揃えるも良し、庭先を拡張するも良し。猫はどんどん遊びに来てくれる。
このアプリでは、にぼしを溜めてグッズを買えば、必ず猫は集められる。
これがバーチャルの良いところで、現実ではいかに愛と誠意を尽くそうと、猫が素直に受け入れることは滅多にない。ダメと言うことは絶対やるし、やって欲しくないことは必ずやる。期待と希望を裏切り続けるのが猫という生き物なのだ。
つまり、猫好きってドMなのね。
六月末に保護した半野良猫のタマも、私の愛と誠意と忍耐を踏みにじり、噛みついて流血させること五回。正に親の心ねこ知らずである。
それでもタマを幸せにするために、毎日「ねこあつめ」で心を癒やして世話する私。いつかタマが心を開いてくれるその日まで!
山口恵以子(やまぐち・えいこ)●作家。最新刊『ふたりの花見弁当 食堂のおばちゃん4』(ハルキ文庫)。
『クロワッサン』982号より
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